マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

正確な決算書を作る重要性

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第46号] 正確な決算書を作る重要性

2019年4月10日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の46】

『相手から見た信頼性を作るということ』

今一度、自社の決算書を見直してほしい。
正確な残高を把握できていない仮払金や短期借入金、中身のよく分からない雑費や雑収入などはないだろうか?

会計基準に則り使われ始めた勘定科目に問題はない。
問題なのは社長のだらしなさから増えていった勘定科目である。これを「雑勘定」と言う。

雑勘定は社長が作るものであり、積み重なれば社会から見た会社の信頼性は損なわれる。
では雑勘定はどうすればなくせるか?基本的には会社が儲けることでしかない。

一時しのぎに使われた雑勘定は、放っておくと後々手痛いしっぺ返しとなり、会社や社長またその家族を襲うこととなる。
作ってしまった矛盾とはきちんと向き合い、儲けを重ね、いち早く解消しておくことが重要だ。

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平成もあとわずかで終わり、来たる5月1日より令和元年が始まります。時間は確実に流れていきます。そんな中で3月を過ぎ、3月決算法人では今、決算を確定させるために忙しくされていることと思います。

日本では3月決算法人が突出して多くなっております。国税庁の平成27年度の統計情報を見ると、3月決算法人は全申告法人の19.3%を占めており、次いで9月決算法人の10.9%、12月決算法人の10.1%と続き、11月決算法人が3.5%と最も少なくなっております。

3月決算法人が多い理由としては、国や地方公共団体の会計年度が3月であること、日本の教育制度が4月から3月ということ、税法改正は行われることが多いのが4月ということなどが推測されます。

12月決算法人が多いのはもともと個人事業主が法人化した場合には事業年度が1月から12月だったのでそれを踏襲している法人が多いのではないでしょうか。

標題からいきなり横道に逸れてしまいました。今日のお話は、今、まさに忙しく決算業務をされているであろう3月決算法人ですが、作成されている貸借対照表、損益計算書は会社の状況を的確に表していますか、というところです。

社会から見て「正確」であるということ

貴社の貸借対照表や損益計算書は会計基準に則って正確に作成されていますか。以前、このメルマガでも「正確な」月次決算という話をさせて頂きました。その話では「正確さ」というのは実は人によって違うので表現としては少し曖昧だということを書きました。

「正確さ」の指標として最も重要なのは、「外部のステークホルダー、特に金融機関や外部株主、税務署などから見て、自社が作成した貸借対照表、損益計算書が「確からしい」という評価を得られるか」です。

貴社にはどれだけの雑勘定がありますか?

もちろん、会計基準に則って正確に作成するというのは至極当たり前のことですが、今の会計基準は実は非常に細かく複雑怪奇なところがあります。上場会社で会計士の監査を受けているような会社であればともかく、中小企業で上場会社と全く同じレベルで決算を行うのは費用対効果から考えてもナンセンスです。だからといって適当にやってしまっても結局、外部の方から信頼されるレベルにない貸借対照表や損益計算書であれば、自己満足になり意味をなさないことになりかねません。
少なくとも外部の金融機関や税務署などが評価する程度の信頼性をもたせなくては、いざ融資を受けようとしても受けられなかったり、あるいは税務調査の際に納税の憂き目に合うこととなるでしょう。

具体的に申し上げると、いわゆる仮払金や貸付金、借入金と称して、使途のわからない資金の流出や流入があったりしないか、ということです。もちろん本当に一時的なものですぐに解消されるもの、あるいは金額が僅少であればそれほど問題にはなりません。

ところが長年にわたり、公私の区別をあまりせずにそういったことが続いていくと、ふと気づいたときには金額が膨らみ、内容も分かりようがなくなっていることが出てきます。こうなると本当に直していくのに苦労していきます。

過去に起こした矛盾は将来の自社に跳ね返る

これを直すためには、会社自体がまずは儲けを出して行かなくてはなりません。つまりキャッシュがないと過去の清算ができないので、儲けることで資金を作ることが必要になります。過去の滞留資産・負債の精算の際には納税が伴うこともございます。社長にとっては厳しい状況となることが予想されます。

それでも過去に起こした矛盾を解決するためには、もう一度矛盾を起こさなくては元に戻りません。その際には過去で楽をした分、今回、痛い思いをすることになるかもしれないということです。

それでも儲けを出せるのであれば、今、改善に着手すべきだと思います。何度も申し上げますが、儲けが出ている時にしかこういった改善はできないからです。

これを放置してしまうと問題は将来顕在化することになります。
例えば、会社が資金不足だということで社長が個人の資金を会社に入れることがあります。会社が儲けた時に返済を受けていれば問題はないのですが、返済を受けずに今に至っていると、将来、相続があった時に会社に対する社長の貸付金も相続財産になってしまいます。その時にもし会社が儲けの出る状況でなくなったとすれば、会社に対する貸付金を相続した人は回収できる見込みのない債権に対して、相続税を払わなければならないことになります。

また逆に会社から社長が貸し付けを受けていて返済していない場合には、金融機関からすれば、貸したお金が事業のために使われずに、社長個人が私的に使用していると判断し、融資を見送ることになりかねません。またある時払いの催促なしになっているでしょうから、税務調査の際に「貸付金ではなく役員賞与である」と指摘を受け、給与加算、つまり所得税を納付しなければならない可能性もあります。

貸借対照表は社長が作るもの

過去に行ってきたことが貸借対照表には出ています。もちろん公私混同せずにやられた社長の貸借対照表は非常にすっきりしています。儲かっていればなおのことさっぱりしています。逆の場合には非常に複雑というかわかりづらいものになっています。

申し上げた通り、過去の矛盾を解消するには、まずは儲けること、そして時間がかかります。ですから思い立ったが吉日ではありませんが、是非とも少しずつ、シンプルな貸借対照表になることを心掛けて頂けたらと思います。

我々マエサワ税理士法人もそういったところのお手伝いをさせて頂ければと思っております。どうぞ今後とも職員一同、宜しくお願い致します。