マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

値上げに対する意識づけ

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第50号] 値上げに対する意識づけ

2019年6月5日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の50】

『値上げ恐怖症』

今が当たり前で最良だと思ってはいないだろうか?

なぜ値上げしないのですか? と聞くと、
「これはこの価格でないと売れない」
「値上げをしたら売れなくなる」
と即座に応える方が多い。

では値上げするにはどうすればよいですか? と聞くと、
そこは千差万別、黙ってしまう方もいれば、アイディアが泉のように湧いてくる方もいらっしゃる。

漠然と値上げに対する恐怖を持っていないだろうか?
もちろん極端な値上げをすれば客は離れてしまう。
だが問題は値上げ自体にあるのではなく、その商品の価値が値上げに耐えられないことにある。
その価格に見合った価値、安いなと思ってもらえる価値が既にないのだ。
売り方、魅せ方、構成、その他見直すところは本当にないのだろうか?
あるならば付加価値を高め、ないならば新たな商品開発をするしか道はない。

言うなればこれは何を努力するかの話でもある。
値下げしてでも沢山売る努力ではなく、どうしたら高く売れるかの努力をして頂きたい。
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今回でこのメールマガジンも50号になりました。第1号の発行からここまでおよそ2年の月日が流れました。拙い文章、また生意気な文章もあったことと存じますが、お付き合い頂きましてありがとうございます。これからも、少しでも経営者の皆様のお役に立てればという思いで続けて参りますので、どうぞ宜しくお願い致します。

さて、今回は「社長の皆様方、『値上げに対する意識』を常にお持ちですか?」というお話です。

私が申し上げるまでもなく、社長であれば誰でも1円でも高く自分の商品を売りたいとお考えでしょう。問題は常に1円でも高く売れるように商品力を高める努力をしているかということです。

利益を上げている会社の努力

利益を上げている社長は皆その努力を日々されています。例えば…

今まで鮮魚の卸売をしていたA社は、産直で直接小売店(レストラン・割烹)へ販売する事業を始めることで大幅に粗利益率を改善しています。

不動産業を営むB社はこれまで仲介を主たる業務としておりました。売り手、買い手から売却価格の3%を手数料として頂くビジネスです。しかし、自社で不動産を取得し、自社の売値で売却する不動産販売業に進出することで大幅に利益を上げるようになっております。

旅客運送業を営むC社では、これまでの観光バス業から高速バス事業に乗り出し、さらに座席の販売管理システムを創り上げ、今では他社の座席まで販売することで大幅な利益改善を果たしています。

酒類販売業のD社では、ヨーロッパから仕入れたワインやスピリッツを売っていますが、その在庫は20年30年前のものから現在に至るものまで、自社倉庫あるいは現地の酒蔵に置いており、毎年違う商品を「その商品でなければダメ」というお客様に提供し、常に高い利益率を達成しています。

ご紹介した4社の業界が、業界として特別景気がいいということはありません。むしろ厳しい経済環境で奮闘されていらっしゃいます。現在、我々が様々な会社・業界と接していてもこの業界は景気がいいと思える業界はありません。やはりこの先も「この会社はいい」ということは言えても「この業界はいい」と言えることはほとんどないように感じます。

何もしなければただ赤字に陥ってしまう

更に付け加えると、上記4社も確かに利益率や利益額は大幅改善ないし、もともといい訳ですが、その反面、リスクを背負っている部分はあります。
鮮魚の卸売の会社や不動産業の会社は卸売りとしての粗利益率、不動産仲介手数料率は常に一定ですが、自社で在庫を持つことで新業態では高い利益率を取れている訳で、在庫リスクを抱えることにはなります。つまり在庫を持つために資金が売れるまで寝てしまうのでその資金を準備しなければなりませんし、在庫評価が下がれば当然売値も下がるのでそういったリスクをテイクした上での利益率上昇、利益額増加に繋げています。酒類販売業でも在庫リスクは全く同じです。旅客運輸業の会社でも規模を拡大していくことでどうしても事故リスクは高まりますし、システム導入に関してのコストも増加します。

しかしながら、もしこれらのリスクをそれぞれの社長がテイクしていなければ、それこそ業界平均程度で納まってしまっていたことと思います。日本の平均を取れば一人当たりの生産性は60万円/月程度、法人の赤字割合も65%程度です。つまり何もしないと会社としては赤字が普通という状態です。

知恵を出すのは原価ゼロ

ですから、法律違反をしないとかいわゆる一般常識を守るというところは絶対に踏み外さないという当たり前の前提はあるものの、商売としての常識は覆す必要があるのかもしれません。今までの商売の常識からいったん離れて考えなければ、なかなか利益を出せないのが、今の日本だと思います。

どうしても過去に成功した事業ほど、その過去のやり方を踏襲しようとしてしまうきらいがあります。私もそうですが、うまくいった方法ほどそれを試してみようということになりがちです。その方が新たな方法を考える時間や手間もなく、結果が出せそうだからです。

しかし現実に過去成功していた事業が現在うまくいっていないのであれば、それを繰り返してもなかなか良い結果を望むのは難しい。中小企業を考えれば、会社は社長そのものですから、社長が起業した時の気持ちで新たな商品を開発していかなければならないのかもしれません。

値上げといっても、今まで100円で売っていたものを何も変えずに150円にしても通常、売れることはありません。会長の前沢も職員に対してよく言う言葉があります。「頭を使うことに原価はかからないのだから、知恵を出しなさい。」と。サービス業は特にそうですが、形があるようでないので、我々自身が商品になってきます。我々がどれだけ顧問先様、社長のお役に立てるかが我々の課題です。

知恵を出すのは原価ゼロ、確かにその通りです。しかしそれが花を咲かせる瞬間というのは、何年も考え続けていてもなかなか巡って来ないこともあります。それでもやらなければならないのが社長業の厳しいところですが、マエサワ税理士法人も微力ながらご協力させて頂きます。

マエサワ税理士法人も常に前向きにやってまいります。今後とも宜しくお願い致します。