マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

儲けるための考え方と給与規程を結びつける

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第56号] 儲けるための考え方と給与規程を結びつける

2019年8月28日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の56】

『いかにして儲けを得るか?』

より大きな売上を目標とすることは悪いことではない。
経営者として、営業マンとして、一つの正しい姿であろう。

しかし、同時に「いくら粗利を稼げば良いか?」の思考を持たねばならない。
さもなくば設備投資や借入返済はおろか、従業員の給与確保もままならなくなる。

利益を意識することで、ただ売上を稼げば良いという思考からの脱却を図れる。
何をどのように売れば利益率を維持向上でき、利益を最大化できるのか?に意識を置くことが望ましい。

もちろんこれらは簡単にいくことばかりではない。
給与を含めた社内の仕組みの見直しや、利益に視点を持たせるべく社員の意識改革も必要となる。
一朝一夕とはいかないが、いかにして利益を稼ぐか?という思考のもと、経営改善を進めて頂きたい。

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今回も顧問先様で開催している経営会議のお話をさせて頂きます。
この経営会議は顧問先社長とマエサワ税理士法人の会長の前沢、この顧問先様の月次を担当しているマエサワ担当者と私の4人で行いました。

この顧問先様は売上が100億円規模にあるものの近年利益的には厳しい状況が続いております。社長はご自身の年齢をふまえ、「なんとか自分が元気なうちにもう一度会社を立ち直らせたい」という強い思いをお持ちです。社長は様々な外部の相談相手とお会いしており、そのひとつとしてマエサワ税理士法人とも顧問契約を締結させて頂いております。

社長とはその日1時間半ほどお話しました。お話を伺って強く感じたのは、社長の「焦り」です。社長は常に「どうやったら会社を元の儲かっている時の姿に戻せるのか」を考えられており、その実現のための具体的な方策をいくつもお持ちでした。しかし社長には時間があまりないこと、あと1,2年でなんとしても会社の道筋をつけていかねばという強い思いも話されておりました。

売上至上主義の営業マンがつくる弊害

最大の問題点は、想定しているより5%以上低い粗利率です。
全国にある営業店の店長の一部が当たり前のことを当たり前に実行できていないこと、現場の監督者の管理能力にばらつきがあり、たびたび余分なコストを発生させていること、により予定する粗利率がまったく達成されていないのです。

営業マンは現状の低い粗利率を是とする節があります。会社が期待する粗利率と現状の低い粗利率の差分は「お客様に対する値引き可能額」と捉えており、そこに大きな問題があります。

粗利率の差分(粗利率の差分と言ってもこれは勝手に営業マンが差分と考えているだけであり、会社としては当然に予定している粗利率で売ってもらわなければ困る訳ですが)を値引きに使ってしまうということは経営サイドから見れば反逆行為です。京セラの稲盛氏は「値決めは経営」とおっしゃっておりますが、全く逆のことが行われているわけです。

値引きはした分だけそのまま粗利益額を減少させ、最終利益をもダイレクトに減少させます。そんなことは皆様百も承知です。しかしより多く売るための手段に値引きを使うのは、やはり薄利多売につながります。その会社のイメージもそういったイメージになりますし、単価が高価なものを売る会社ほどその影響は大きなものになってきます。

どこの会社でも営業マンの中には売上を上げることに必死です。そこから生み出される利益がどの程度か、あるいはどれくらいの期間で売上金を回収できるかについてはほとんど興味を持っていないという方も散見されます。しかしこれでは「労多くして益少なし」です。

営業マンである以上、会社に売上を残さなければならないので自分の仕事をしたまでだ、というのはわからなくもありません。しかしどんなに売っても最終的に赤字になっているようでは会社がもちません。値引きをしてたくさん売っても最終的に赤字になるようでは単なるボランティアにすぎません。

価値あるものを価値が分かる人にそれなりの価格で買って頂くために営業マンがいるわけです。この会社の営業マンはとにかく数を売ることで売上を作ることに全力を尽くしているように見えました。

利益がなければ会社も従業員も生きてはいけない自覚を持つ

その原因のひとつは、実は給料についての評価規程にあるかもしれません。基本的には商品を売ることで売上を計上することができれば計上しただけ給料が良くなるというものです。こうなると当然、営業マンとしてはできるだけ商品を売った方が自分の評価が高くなり給料が良くなる訳で、結果として、値引きをしてでも売った方が良いというインセンティブが働きがちになります。

そうなると売ること自体に一生懸命になってしまうので、納期についてもあるいは出来上がった商品についてのチェックも予算に対する実績のチェックも全てが疎かになりつつあるのが現状なのかもしれません。

例えば、売ることだけに評価基準を当てるのではなく、実現した粗利益の率を基本としたうえで、納期通りに納品できれば評価を上げるようにしたり、値下げに対するペナルティーを設けるということも考えられます。

ただ長年の蓄積が現在の問題として顕在化しているのが実情です。評価方法の見直しと同時に店長や営業マンへあるべき営業についての研修・啓蒙作業は欠かせません。そして何よりトップが従業員の考え方を変えていく不断の努力が必要になってきます。

いろいろ考えていくべきところが多いですが、結局は儲けづらくなってしまった体質をどうやって元の儲かる体質へ変えていけるかです。どんな商品でも100億を売ることは簡単ではありませんから、過去において素晴らしい経営をされていたことに疑念はありません。あとは「変わるんだ、変えるんだ」という思いを強く持つことができれば、地道に実行に移していくことで、それらをやり切った時にいずれはきっと儲かる体質へ変化できると思います。

我々マエサワ税理士法人も微力ながら、会社の体質改善の早期実現に向けてのご提案を継続的に発していきたいと考えております。
今回もお付き合い頂きましてありがとうございました。