マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

好景気の終焉

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第80号] 好景気の終焉

2020年7月29日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の80】

『不景気を前提に商売を考える 』

景気が良いか?悪いか?
指標は様々であろうが、体感としてバブル崩壊以降は低迷し続けている、と感じている方がほとんどではないだろうか。このコロナの影響も、深い爪痕を残すことだろう。

それでも我が国で経済活動を続けていく以上、続く不況を前提に商売を考えなければならない。
儲かりづらい国で、いかに生産性を上げ、儲けを増やせるか?
コロナ禍で変化する常識を踏まえ、柔軟に商品・サービスの開発を続けて頂きたい。

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「景気後退」認定へ

7月23日付の日本経済新聞に『景気後退、政府が認定へ 回復、18年10月まで 戦後最長にならず』という記事がありました。

内閣府は2012年12月から始まった景気回復局面が2018年10月に終わり、景気後退に入ったと認定する方針だそうです。拡大期間は71カ月にとどまり、08年2月まで73カ月続いた「いざなみ景気」の戦後最長記録を更新しなかったとあります。

一方で、この期間中の成長率は過去の回復期を下回り実感の乏しい回復となったとも書いてあります。

景気後退に入った2018年10月は、米中貿易摩擦の激化で世界経済が減速し、輸出や清算に停滞感が強まり始めた時期にあたり、その後、2019年春から夏にかけて内需を中心に持ち直した後、消費税率の引き上げや大型台風でブレーキがかかり、新型コロナウイルスの影響が追い打ちをかけたとあります。

今回の景気回復の長さは戦後2番目だそうですが、この間の経済成長率は平均で年率1.1%程度、景気動向指数の上昇幅は12.7ポイントだったそうです。戦後最長の景気回復の長さであったいざなみ景気は、経済成長率が平均で約1.6%、景気動向指数の上昇幅が21.0ポイントであり、今回の景気はいざなみ景気を下回るものであったといえます。

この記事は「回復実感が乏しいのは家計部門への波及が鈍かったことが大きい。企業の内部留保は業績拡大で増えたものの、賃金の伸びは鈍い状態が続いた。家計の社会保険料や税負担も増加傾向だった。」と締めくくられていました。

景気が良い実感の乏しさ

そもそも経済成長率が年率1.1%程度でであるにもかかわらず「景気がよい」とされているところに違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。

例えば1955年から1973年までの高度経済成長期において経済成長率は10%を超えることもあるくらい、文字通り高い経済成長率を維持していた時期でした。第二次世界大戦が終わり、日本の国土は焦土と化したところからのスタートで高い経済成長率を実現し、1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と書かれました。

私が生まれたのは第二次ベビーブーム真っ最中の1973年。この年にはオイルショックがありました。日本は高度成長期から安定成長期に入っていきます。それでも5%内外の経済成長率を維持していました。

その後1986年から1991年のバブル景気の時、私はまだ学生。ですから日本の経済力の強さを私自身は直に感じたことがありません。それでも当時は休日の早朝に父をゴルフ場へ送りに行く時、高速道路を走っていると周りを走っている車という車がほとんど高級車だったことが強く記憶に残っています。

もちろん今でも高級車は走っています。生活様式が変わって、車を購入しなくなった、あるいはカーシェアリングで十分と考えるようになった、ということもいえますが、当時はやはり「高級車に所得を回す余裕があった」と言えるのではないでしょうか。

景気は雰囲気だ、とよく言われますが、まさにその通りだと思います。当時の好景気の時と、最近までの好景気を比較すると、雰囲気がまるで違います。なんとなく浮ついた、でも明るい雰囲気を昭和平成初期には感じていたものですが、今回の景気にはそういったものはほとんど感じられませんでした。

おそらくそこが経済成長率が10%なのか5%なのか1.1%なのかの違いなのです。今回の好景気は期間としては長かったものの、経済成長率から見れば過去の好景気に比べるとさほどのインパクトがないのは無理もないことなのかもしれません。今後の経済環境はコロナ禍を区切りにさらに大きく変わっていくことになるでしょう。

今般の景気後退の局面がいつまで続くのか、その終わりの時期を予測するのは困難です。しかし、どんな不景気であっても、成長を続ける企業があることも事実です。「不景気だから」を言い訳に思考を停止させてしまうことがもっとも恐ろしいことではないでしょうか。

経済環境の更なる変化に向けて

この1,2年であらゆる業界で業界再編が進むものと思われます。日本の製造業、特に中小企業では人海戦術に頼っていた部分が多いのですが、コロナ禍で工場の機械化が一気に進むように思えます。そうでなければコロナ禍には対処できず、工場生産が完全にストップしてしまう恐れがあるからです。

第三次産業であるサービス業は既に大きく変わり始めております。日本の時間当たりの労働生産性はOECD36か国加盟国中21位(2018年、日本生産性本部調べ)、先進7か国中最下位でした。特に第三次産業であるサービス業の生産性はアメリカのほぼ半分に過ぎないそうです。
いまや日本で就業している人の過半数が第三次産業に従事しています。われわれはこの生産性を高めていくことでしか、経済社会を生き抜くことはできないのです。

「長時間、言われたことを、正確にこなす」というこれまでの真面目さだけではなく、「決められた時間の中で最高の結果を出すために何をすればいいのかを考え、実行する」という新しい真面目さこそ、日本のサービス業に求められた命題なのだと感じています。

マエサワ税理士法人も、税法を中心とした諸法規を遵守する「真面目さ」を保ちつつ、いかに顧問先の皆様の儲けにつながるご提案ができるかを真摯に検討し続けます。