マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

PL前期比較の意味

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第103号] PL前期比較の意味

2021年6月16日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の103】

『予実分析を真剣に行う』

目標と予算は異なるものだ。
このような数字を目指したいが「目標」であり、このように数字が進むだろうが「予算」である。
だからこそ進路にズレが生じたときの原因分析に意味があり、そもそも分析の土台に上がれない予算など価値がない。
経営の数字目標に対し、社長と社員の方位磁針たる予算を作り、儲けの役に立てて頂きたい。

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コロナ禍に見舞われて早一年余りが経過しました。新規感染者数はなかなか減らない状況ではありますが、ようやくワクチン接種が本格化し始めました。

コロナ禍により経済環境にも大きな変化が起きております。業績が下がってしまったという企業が圧倒的多数を占めておりますが、とりわけコロナ7業種と呼ばれる飲食、宿泊、小売り、生活関連、医療福祉、エンターテイメント、陸運は大打撃を負っております。

マスコミは飲食店を中心にコロナの影響を報道しておりますが、実際には飲食店と同等以上に大きな影響を受けている業種や企業も山ほどあります。また、助成金や融資規模が企業実態に見合っていないなどの理由により、現在まさに存続の瀬戸際にまで追い詰められている企業も多く存在します。

ただ比較をすることが目的ではない

そんな状況下でもマエサワ税理士法人ではコロナ前とほぼ変わらず月次巡回監査を実施させて頂いております。もちろん顧問先社長との話し合いでリモートに変更して月次巡回監査を実施させて頂いている顧問先様もございます。

コロナに対する捉え方、考え方は経営者によってさまざまです。
「正しさという物差しは人によって違う」という認識は大前提とすべきでしょう。
しかしながら、社長の皆様の経営、つまり「儲けを創出すること」にいかにお役立ちできるか、というマエサワ税理士法人の基本方針は不変のものです。コロナ禍だからこそ、社長と考えを共有し、今まで以上に社長の経営の一助になるべく月次巡回監査の機会を大切にしていこうと考えております。

さて、この月次巡回監査での社長とのミーティング、あるいは経営幹部の皆様を交えた報告会における月次損益のご報告に関してですが、少なくない顧問先様において「今の月次損益」と「1年前の月次損益」を比較することに意味があまりない場合が出てきております。

つまり、冒頭申し上げたコロナ禍に見舞われた当初がちょうど1年前の3月から5月あたりで、「その当時の業績」と、「コロナ対策がある程度進んだ現在の業績」を比較する意味が実質的にない場合がでてきているのです。
コロナ禍で1回目の緊急事態宣言が発出され、極端に売上が落ち込んだ1年前の数字とコロナ禍での経済環境に対応できてきた現在の数字を比較しても有用ではありません。

では2年前の数字と比較すれば良いのではないか、という話も出てきます。それはそれで一定の意味はあるでしょうが、やはりコロナ前と現在の経済状況が全く異なるケースでは適切な比較対象とはいえないかもしれません。

社員が自分事と捉えられる予算を作りましょう

コロナという異常事態を考えると実績と比較する数字として、今こそ社長の考える「予算」を据える意味は大きいように感じます。

従来から予算実績比較をされている顧問先様も多くございます。前期比較とともに予実比較も行い、実績との差額についての原因分析をされております。

ただし、予算の作成については注意も必要です。予算が社長以外の幹部の皆様と共有できていない数字になっていること散見されるのです。

どういうことかといえば、社長が「今年の売上 〇〇億、経常利益 〇億を目指すぞ」という大目標を掲げられます。それに基づき、各部門に予算売上が割り振られ、さらに経常利益が算出される。ところが具体的にどんな顧客をターゲットにし、どれだけの顧客を増加させるのか、など明確な青写真がないままに予算が組みあがる。また、前期売上から〇%アップ、前期経費から〇%アップなど、やはり具体的な売上計画などがない状態で予算が組みあがる。

こうなると、数字に現実的な具体策がついてこないので、社員からすると予算が絵に描いた餅になってしまいます。「どうして予算が達成できないのか」と言われても現場の状況が何も変わっていないのですから当然です。

やはり組織の下へ行けば行くほど計画には具体性が必要になってきます。具体的に予算達成のための方策を提示していかなければ、現場の予算達成に対するモチベーションは上がっていきません。
それを解消するためにも予算は前期の〇%アップという形ではなく、具体的な数字の積上げで作成する必要があります。予算は実現可能性のある数字として運用していかなければ、社長の数字への思いを社員が「自分事」として捉えるのは難しいでしょう。

仮に1年、2年と予算を達成できないでいると、もはや予算の数字だけが独り歩きしてしまい、予実分析をしたところで分析のための時間と分析結果を話し合う会議の時間が無駄になりかねません。

予算を創り上げるのは一苦労です。ですが、社長にとっては社員の皆様と同じ方向に進んでいくための指標になりますし、社員の皆様にとっても自分が何をすべきか明らかにしてくれます。

コロナ禍で大きな影響を受けた会社では、今までの経済活動の形すら変えざるを得ず、今までの業績は意味を持たなくなるということもあるかと思います。そして今後まさに儲けを創出しなければなりません。そういった顧問先様では予算策定が重要になってくるはずです。もちろんマエサワ税理士法人職員一同、ご協力させて頂きますので、どうぞお声がけのほどよろしくお願いいたします。