マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

一人当たり生産性

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第105号] 一人当たり生産性
 

2021年7月14日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の105】

『黒字化・黒字の継続 』

生産性を維持向上できず儲け続けている会社は皆無である。
いかにして稼げる商品を生み出すか、稼げる社員となるか等、企業そして一人一人のたゆまぬ努力でその維持が図られる。
赤字は悪である。黒字化のため、黒字を出し続けるためにも常に生産性向上を意識して頂きたい。

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これまでも『「一人当たり生産性」について月70万円は確保していきましょう』というお話をしてきました。「一人当たり生産性」は粗利益額を従業員数で除したものです。生産性が月70万円とすれば、粗利益の半分を人件費として従業員へ支払うとすると人件費は月35万円となり、労働分配率は50%となります。残りの35万円で地代家賃などの固定費を支払い、最後に残ったのが利益となります。

日本企業の生産性格差。なぜこうなるのか?

中小企業庁のホームページによると、2018年度の労働生産性は以下のとおりだそうです。ちなみにここでいう労働生産性は「一人当たり生産性」と同義になります。

大企業(資本金10億円以上)製造業 ・・・年1,394万円(月116万円)
大企業(資本金10億円以上)非製造業・・・年1,367万円(月114万円)
中小企業(資本金1億円未満)製造業 ・・・年  554万円(月 46万円)
中小企業(資本金1億円未満)非製造業・・・年  543万円(月 45万円)

ちなみに2018年度から遡ること15年、2003年度の労働生産性は以下のとおりです。
大企業(資本金10億円以上)製造業 ・・・年1,301万円(月108万円)
大企業(資本金10億円以上)非製造業・・・年1,247万円(月104万円)
中小企業(資本金1億円未満)製造業 ・・・年  517万円(月 43万円)
中小企業(資本金1億円未満)非製造業・・・年  547万円(月 46万円)

皆様はこれらの数字の比較で何を感じますでしょうか。

私は「大企業と中小企業との生産性の差」を感じます。いずれの年代でも大企業と中小企業の間では倍以上の開きがあります。
もうひとつは15年の年月を経ているにもかかわらず、大企業であれ、中小企業であれ、ほとんど数字が変わっていない、つまり「成長していない」ということにも気づきます。

大企業と中小企業の生産性に圧倒的な開きがあることを、中小企業経営者は今まで以上に意識する必要があります。同じ人が働いているのに、一方は1,400万の粗利益を稼ぎ、もう一方は550万しか稼げていない。商売をする土俵は大企業であろうと中小企業であろうと同じです。もちろん資力や人の面で大企業は中小企業に比べて優位に立っていることが多いのは事実です。しかし即断即決、意思決定の早さについては中小企業に分があります。

私が監査法人に勤務していた時、ある食品加工メーカーに会計監査で伺っていたことがありました。この会社には子会社が数十社とありました。その子会社の経営については厳格なルールがあり、2期連続赤字になれば即座にその会社を清算させるというものでした。うまく子会社経営ができれば将来の道も見えてくるが、逆に子会社経営がうまくいかず2期連続赤字になれば経営手腕に疑問符が付き、将来の道が閉ざされる可能性が高くなる、ということです。

この会社では黒字が当たり前で赤字は悪、だということです。経営に対する覚悟が垣間見えます。私も口ばかりでなく、その精神は学ばなければなりません。大企業だからとか中小企業だからということでなく、黒字経営を是として経営をしていくことが重要だということです。

その意識の差が大企業と中小企業での生産性の開きにつながっているように感じます。もちろん中小企業の中にも大企業の生産性に引けを足らないどころかそれを上回る会社も存在し、生産性の高い中小企業はマエサワ税理士法人の顧問先様にも数多くいらっしゃいます。

黒字化に不可欠の視点

15年間、生産性が伸びていないという現実にも大きな問題が内在しております。よく平成の時代を称して「失われた30年」などと言われますが、この生産性の伸び悩みもそのひとつです。世界を見ると、2003年から2018年にかけて中国の名目GDPは6.7倍へ、アメリカの名目GDPは1.8倍へ、日本の名目GDPは1.06倍へとなっております(世界経済のネタ帳より)。

同じ15年間にもかかわらず中国はもとよりアメリカと比べても日本の成長率が低いことがわかります。日本の労働生産性は実は「ジャパンアズNo.1」と言われていた1990年の頃から高いものではありませんでした。

日本人特有の「真面目さ」は大事にしつつ、「自分たちの商品・サービス」を売るのではなく、「買う人が欲しがっている商品・サービス」を売ることを強く意識しなければ生産性を大きく上げることはできません。

最近はコロナ禍もあり、半ば強制的にIT技術の発展、AI導入により単純作業の担い手が人力からシステムに移り、効率化が進んでいます。効率化が進むことで生産性は上がりますが、これはあくまで効率の問題です。商品やサービス自体に付加価値をつけていかなければ、生産性を飛躍的に伸ばすことは難しいでしょう。

儲け続けるためには生産性を上げ続けること、そして生産性を上げていくにはよい商品、サービスを提供するための商品開発を続けていくこと、よいお客様をつかまえること、これらをよく理解した社員を創ることです。

これはコロナ禍以前から変わったことではありませんが、アフターコロナでこそ、これらを実行し続けられるかどうかで企業経営を存続できるかどうかが決まってくると私は感じております。