マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

これからの会計事務所のありかた

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第108号] これからの会計事務所のありかた 

2021年8月25日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の108】

『下請け思考からの脱却』

商品やサービスの提供をもって、顧客の役に立ち対価を得ること。これが商売の基本である。
より多くの対価を得るためには、顧客の満足度を上げる必要があり、同じ種類の商品を売るならば、他社よりも優れた付加価値が求められる。
儲けを増やすためには、どのように役に立てるか?満足度を上げられるか?の視点を常に持ち、求められたことだけをこなせば良いという思考から脱却する必要があるだろう。

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8月17日から19日までの三日間、税理士試験が実施されました。それに続き20日、21日には税理士受験生が通う専門学校主催の就職説明会があり、マエサワ税理士法人も例年通り参加いたしました。

税理士を目指す多くの人は大学生の間にダブルスクールの形で専門学校に通いつつ、税理士試験の勉強を開始します。税理士試験は必修科目である簿記、財務諸表論、選択必修科目である法人税、所得税、選択科目である相続税法、国税徴収法、固定資産税、消費税法または酒税法、事業税または住民税があり、全部で5科目合格するといわゆる官報合格(税理士試験で5科目合格すると官報に名前が掲載されることからこのように呼ばれています)となります。

税理士に求められる仕事の変化

税理士試験はこのように5科目合格して税理士になるというのが一般的によく知られておりますが、税理士になる方法はほかにもあります。大学を卒業後、会計あるいは法律系の大学院で学ぶことで税理士科目の一部免除が受けられます。また公認会計士登録されていれば税理士登録できます。さらに税務署に所定の年数以上勤務し、所定の研修を受けることで税理士になることもできます。

税理士試験は今回で71回となりました。ちなみに前回の70回は受験者数が29,779人5科目合格者は648人でした。昨今、税理士業界で頻繁に話題に挙がるのが税理士試験受験者数の減少です。30歳以下の受験者数も減少の一途を辿っており、受験者全体の3割に満たなくなっております。

では、なぜ若い人たちが税理士を志望しなくなっているのでしょうか。一つの要因に「税理士という仕事そのものがなくなる」という不安があるという話があります。2013年にオックスフォード大学の研究発表でAIの普及により失われる仕事として「税務申告書代行者」「簿記、会計、監査の事務員」が挙げられたことが遠因になっているそうです。(野村総研からも同じようなデータが2015年に公開されました。)

さらに税理士の平均年齢が高いことなどから「古い業界」のイメージがある、という意見もあるようです。

受験者数の減少と、税理士試験の難易度には直接的な相関はありません。合格することが困難であることは今も昔も変わりがないのです。ただ、合格すればバラ色の人生が待っていたのが30年前の税理士試験だったはずです。それがこの30年間で状況が一変しました。

私自身はAIに仕事を奪われるとか、税理士の平均年齢が高いというのは現在事象あるいは蓋然性の高い事象であり、根本的には30年前までのように稼げる業界でなくなったから、税理士試験の受験者が減ったのではないかと感じています。

だからこそ若い人が税理士試験を受験しなくなり、若い人が税理士にならないから結果として税理士の平均年齢が上がっているだけです。

古くから税理士の行ってきた業務のひとつに記帳代行があります(マエサワ税理士法人では40年前から、記帳代行業務は行っておりません)。まだまだ多くの会社で経理を外注しております。経理のために人を一人雇うより会計事務所に外注した方が安いからです。昭和の時代であれば非常に有り難がられたので当時は報酬も高かったようですが、パソコンの登場でその報酬もだいぶ値が崩れ、さらに現在ではクラウド会計の進展で仕訳の自動化、簡単なAIが搭載され、より省力化が進んでいます。

こういった状況になると記帳代行で思うような報酬を頂くことはできません。徹底的に会計事務所でも省力化を図り、記帳代行の数で勝負をしているところもございます。需要は決してゼロにはならないでしょうけども、こういった記帳代行を業務の中心に据える会計事務所を見れば、税理士という職業の将来に不安を感じても不思議ではないと思います。

下請けではなくパートナーになる

税理士だけでなく、どんな職業、業界であっても、やはり下請け作業では大きくあるいは長く稼ぐことは難しいです。記帳代行は下請け作業に他なりません。これを少なくとも会計事務所の主力業務としてやっていてはなかなかこの先、生き残っていくことは難しいでしょう。

社長の皆様からしても、仮にマエサワ税理士法人に経常的に経理を任せていたとしたら、マエサワ税理士法人の担当者や私に経営に関する事項を相談されるでしょうか。自分が下請けさせている人に経営の相談をするなどということは考えられないと思います。

我々は会計事務所の人間ですから税務会計に関しては100%合わせていかなければなりません。少なくとも業界水準を10%は上回る水準を事務所として維持していなければなりません。

しかし我々は、税務会計と同じくらい『顧問先様の経営に深く踏み込んで儲けを出すためのご提案をどこまでできるか』を重視しております。これをやっていくには少なくとも「我々は税務会計だけをやっている」という考えから脱却しなければなりません。そうでないといくら下請け仕事をしていないといったところで、下請け的心持ちで仕事をしていることに他ならないからです。

口でいくら「社長の役に立つ儲けの提案」などと言ったところで、絵に描いた餅にすらなりません。やはり社長の皆様とマエサワ税理士法人は、経営についてもお互いにパートナーとして信頼関係を築いていきたいと考えております。「社長が経営に関する相談相手を3人思い浮かべるとき、そのうちの1人はマエサワ税理士法人である」というのが私の目標です。