マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

予算を策定する意味

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第129号] 予算を策定する意味

2022年6月15日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の129】

『いま自社に必要なこと 』

予算とは理想を語るものではなく、現実を語るものだ。
ただなんとなく数字を並べて満足感を得ることに意味はなく、無理難題を投げるものでもない。
やるならば、現場で指針となる活きた予算作りが望ましい。

気を付けたいのは、予算策定が目的となってしまわないことだ。
予算をどれだけ頑張って作っても、売上は1円も稼げない。
目的は儲けること。そのために、いま何が必要だろうか?

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マエサワ税理士法人では毎月、月次監査で顧問先様へ伺い、必ず社長とのお打ち合わせの時間を設けさせていただいております。一般的にはその月の損益の状況のご報告から始まることが多いでしょうか。その月の損益の説明の中で、比較する数字として前年同月の数字を用いることもよくあります。

貴社で現状把握に相応しい指標とは?

今の数字だけ見ても客観的に良いのか悪いのかわかりづらい時に「前年に比べて・・・」という切り口は数字の良し悪しの判断には有用です。基本的には企業というのは拡大基調であるべきです。そういう意味でいえば前年実績を常に上回っていくことが理想ではあります。

ただし、前年比較では不十分な場合もございます。ひとつは前年同月より良いからといって本当に良い数字なのか。わかりやすくいえば、前年同月が赤字だったとして当月の数字が前年同月と同様赤字であったが赤字幅が減少していたとすると、前年同月より良化しているのは事実ですが、黒字ではないので良い状況とはいえません。

もうひとつはコロナ禍のまっ最中にあった前年同月より当月が良かったとしても、本当に
それでよいのか、つまり前年の数字が比較数字として適切ではない場合もあるということです。そういう意味では、コロナ禍前の数字との比較も必要かもしれません。

では当年実績と比較する数字は何が理想なのでしょうか。
それは社長の作成する予算なのではないでしょうか。予算を策定されている顧問先様も少なくありません。ただ、予算の数字に意味を持たせている会社はそれほど多くはないかもしれません。

多くの社長が作成される予算は、①前年実績に〇%増やした売上、②社長が5年後10年後これくらいの売上にしたいから1年後はこれくらいの売上、というようなイメージがほとんどです。ざっくりとした売上目標です。

これ自体もよくないということではありません。ただ〇%増やすための根拠や1年後はこれくらいの売上とした根拠はとても重要だと思います。もちろん将来のことなど完璧にわかるわけがありませんが、社長のこれまでのご経験、現状の経済環境など考えての予想というのは非常に重要です。

要は将来予測としても積上げ式で売上を積み上げていかなければ意味がないということです。積上げ式で売上を創ることができれば、実績と比較する際に明確にどの取引先、どの担当者の売上が予算より良かったのか、悪かったのかが明確になります。全体としての売上が予算より増えたから良かった、予算より減ったから悪かった、といっても数字を比較しただけの話で、今後の経営に活かせるヒントに何一つなりません。なぜ良かったのか、なぜ悪かったのか、その分析にヒントがあるのです。

”意味”のある予算を作ることが重要

予算は単なる目標ではなく、必達目標となります。だからこそ予算と実績の差異分析は極めて重要になります。これは予算を達成していてもしていなくても同じです。単価が外れたのか、数量が外れたのか、取引先ごとの売上がぶれたのか、差異の原因を知ることが重要です。
予算と実績の差異を原因分析するために予算を作るといっても過言ではありません。

分析自体、時間がかかることもありますが基本的には単純です。単価×数量ですから、取引先ごとあるいは担当者ごとに実際の売上の単価と数量を把握し、予算と実績を比較する。まずはどこに予算より増えた、あるいは減った原因があったのかを突き止める必要があります。

この分析を進めていけば、どの取引先の売上が予算に対して増加したのか減少したのかわかり、さらに売上が増加あるいは減少したのかの原因分析に繋げられます。担当者ごとの分析も可能でしょう。
同じことを仕入についても実施すれば、結果として粗利益についても原因分析をしたことになります。

最近はコロナあるいはロシアのウクライナ侵攻により、世界中であらゆるものが値上げされております。仕入値が上がっていく傾向が強いので、是が非でも売価に転嫁していかなくてはなりません。それで値上げできればよいですが、より消費者に近いところで商売されている企業を見るとそれも厳しいようです。売価を上げるためにもひと工夫が必要なところです。

フルモデルチェンジも必要です。いつも申し上げている「新商品、新サービスの開発、新業態の開発」などがそれにあたります。ここで「売価を上げる」と申し上げている部分はマイナーチェンジの部分です。商品自体の見た目を変える、内容量を変える、営業マンの少しの気の利かせ方を変えるなど、そういったまさにひと工夫が必要です。

ここでもう一つ重要なことがあります。予算自体が予想数字とはいえ、精緻な数字でないと意味のない分析になってしまうということです。曖昧な予算値と実績の差異分析をしようとしても分析の意味がありません。

ですから予算を策定する際には予想値とはいえ、売上の積み上げでなければ実績との差異分析はできませんし、やったところで形だけの分析になってしまいます。

予算を策定する際には積上げ式に数字を積み上げていく、月ごとに予算を創っていく、予算実績の差異分析とその原因分析をしっかりやっていくこと、これができれば予算を策定していくことに大きな意味が出てくると思います。

予算策定について、経営会議という形で別途時間を作り、マエサワ税理士法人もお手伝いをさせていただいている顧問先様もございます。予算策定を考えていらっしゃる社長がいらっしゃれば是非、担当者までご相談ください。