マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

現場を知ることの重要性

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第131号] 現場を知ることの重要性

2022年7月13日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の131】

『儲けのための合理性 』

儲けるために必要なことをやる、不必要なことはやらない
突き詰めれば経営に必要なこととはこの一点であろう。

儲けるために必要なことをするには、それが何かを理解せねばならない。
顧客へ商品・サービスをもって役に立つことで儲けを得るのであるならば、その顧客が何を求めているか、どうすれば役に立てるかをより真剣に考え続けなければならないだろう。

どうすれば儲かるか?の行動を、日々積み重ねて頂きたい。

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お米の卸売をされている顧問先様がございます。この顧問先様には複数の会社がございますので、月次監査にはマエサワ担当者4名で伺っております。この顧問先様からの「経営計画を策定していきたい」というご要望を受けまして、経営計画策定のための経営会議を実施することになりました。この経営会議に参加されているのは会長とグループ会社2社の社長、合わせて3名の方々です。

どうやって数字が生まれるのかを掴むこと

この会社の会長はその昔、一倉定先生(経営実学の祖)の講義を聴講されていた経験をお持ちです。会長が会社経営をされるにあたり、その講義でよいと思ったことを実践されてきました。会長自身は創業者として、社員と一致団結して今の会社を創り上げてきましたが、経営を引き継いだ次世代の2人の社長(グループ会社2社のそれぞれの社長)は、今まで積み上げてきた会社をさらに成長発展させていかなくてはなりません。

創業者の強みは裸一貫でゼロからスタートしたことかもしれません。様々な創業社長とお話させて頂いておりますが、経営的にピンチを迎えれば迎えるほど、「もし仮にうまくいかなくても元に戻るだけ」と仰って笑い飛ばす方が非常に多いです。

もちろんその実はありとあらゆる方策を考え、元に戻る気などさらさらないはずですが、究極的にうまくいかなかった場合は、元に戻るだけ、という覚悟をお持ちであることに偽りはないと思います。それだけの覚悟をもって経営に当たられており、凄まじいほどの精神力の強さを感じます。

この顧問先会長も稼がれている他の社長同様、「勉強のための」経営計画の策定には一切の興味がございません。当然です。会長が求めているのは「儲かるための」経営計画です。目標の売上を達成するためにどのように設備に投資し、人繰りをし、そのために資金繰りをどうしていくか、その結果としていかに稼ぎを残していくか、そこにのみ焦点を当てていらっしゃいます。

ですから経営学的な勉強という雰囲気はこの経営会議にはありません。より実践的、より儲けを意識した会議となっています。ところがです。私自身は既に2回の経営会議を実施しました。経営上の数字は見れば理解できます。ただ数字の裏にあるはずの経営がよく見えてこないのです。実は私自身はこのグループの月次に関与しておりませんでした。

数字はあくまで結果であり、それは日々の経営の積み重ねから表れるものです。日々の経営は月次監査を行っていても見えてくるまでに時間がかかるものです。その作業を私はしていないので3人の方々が心から納得できる言葉が出てきません。そこで私は会長に会社の所有する工場の視察のお願いをいたしました。会長には快く工場視察を認めて頂いた上、会長自ら工場のご説明をして頂くことになりました。

数字の裏側の経営を理解する

当日、会長のお車で移動しながら工場を三か所回って頂きました。巨大な設備が音を立てて稼働しています。いずれの工場も、清潔感がございました。整理整頓が行き届いており、もみ殻などが散らかっても社員の方がすぐに箒で掃いて、常に床にごみがない状況になっておりました。最新の設備のほかに、稼働を始めてから20年以上経過する設備もございます。しかし何より工場全体の清潔感が、こちらの企業の真面目さ、信頼性を体現しているように感じました。

社員の方々の行動も機敏であり、お話させて頂いても受け答えがしっかりされています。会長によれば昔は暴走族だったヤンチャな人しか採用できないような時期もあり、それはそれはご苦労されたそうです。

また会社の拡大時期に一斉に退職されてしまい、窮地に追い込まれたことも一度や二度ではなかったそうです。

それでも一倉定先生の仰っている「現場は整理整頓が最重要」ということを心から本当にそうだと考え、それを実践できる人を育てることに注力してこられたそうです。

このほかにも車中で会長からは経営のご苦労話を笑いもありつつ、様々なお話を頂戴しました。やはり一つの会社を40年50年と生き残らせて今日までやってこられた訳で、今だからこそ笑ってお話しできることですが、当時のご苦労は想像の外なのだろうと思います。

月次監査は数字を見ることも重要ですが、数字の裏側の経営をいかに理解するかがさらに重要だと思っております。だからこそ現場に行かなくては我々の月次監査も形式的なものになってしまうと強く感じます。

顧問先様自身を知ること、そしてその周りのステークホルダーを知ることが顧問先様の数字を見る上では非常に重要です。税務会計は数字が整った後に使われるものであって、数字自体は日々の経営の積み重ねです。だとすれば税務会計以前にその日々の数字の積み重ねの方がよほど重要ではないでしょうか。

残念ながら社長ほどには社長の経営されている事業を知ることはできませんが、少なくともそこに興味をもって内容を知ろうとする努力は常にし続けなければならないと今回の工場視察でも改めて強く感じました。これからも経営会議は都会のオフィスで実施されます。しかしこの会社の儲けの源泉となる三工場を視察させていただいたことを踏まえ、より深い共通認識に基づいた、活きた会議にしていきたいと考えております。

今後ともマエサワ税理士法人及びマエサワ税理士法人担当者一同をどうぞ宜しくお願い致します。