マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

社員は見ている

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第138号] 社員は見ている

2022年10月19日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の138】

『儲けに集中できる環境を整えること 』

どれくらい、どのように儲けていくか?
これは経営において最重要と言える会社の方向性であり、トップが決め、社員は受け取り、一丸となって儲けに邁進するのが王道と言えよう。
今、自社にそれを邪魔する”何か”がないだろうか?
透き通った水を求めているとき、そこに雑味や濁りは相応しくない。
儲ける姿勢を浸透させるために、邪魔な何かは一早く取り除くべきだろう。

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なにか一体感の欠けた雰囲気を醸成するもの

今回は、先日ある顧問先様へ伺った際に感じたことをお話しさせて頂きます。この顧問先様は建設関係を行っている会社の子会社です。騒音レベル、動植物の生態系、川の流量など様々な事前環境に関する調査を生業とされている会社です。

私自身、こちらの会社には7,8年前まで担当として伺っておりました。当時の会社は親会社との取引割合が大きく、外部との取引はまだまだ少ない状況でした。

当時参入を試みていていた分野は公共的な部分が多かったため、会社は積極的に入札に参加されていました。しかし入札となれば建設業には会社ごとにポイントが与えられており、そのポイントの多寡が入札への参加の可否、あるいは入札により取引を獲得できるか否かに大きな影響を与えます。この会社の当時の実力ではなかなか思うように取引を受託できませんでした。

そうはいっても売上が立たなければ資金繰りが立ち行かなくなるので、粗利益率が低いことを覚悟の上で入札に参加し、仕事を取りにいくことも間々ありました。ですから私が伺っていた当時は売上があったとしてもそれに見合う利益がなかなか計上できていませんでした。また粗利益率の高い仕事を取れても翌年は入札で落とせず、毎年ぎりぎりの勝負をされていました。

一方で親会社からの仕事はある程度見込めるものの、親会社も利益を出さなければならないので粗利益率は高くはならず、赤字と黒字をいったりきたりしてしまいます。

親会社からの取引に頼っていては、この会社が黒字経営を持続していくことは難しくなります。なんとか外部取引先との取引割合を増加させていかなければというところは社長と私の中でも一致した考えでした。

当時の社長は先頭を走って様々な仕事を民間の会社からも獲得して奮闘していたものの、なかなか社員が社長と同じ方向へは向かっておらず、各部門がそれぞれに動いていて会社としての一体感は欠けているように見えました。

常に見られているという意識をもつ

そして、数年ぶりの訪問です。私がまず最初に驚いたのは、オフィスが明るく、整頓されていることでした。実はこの会社のオフィスは以前はかなり雑然としていました。社員のいる部屋を入り口から見ると奥行きがそれなりにあるのですが、机の上や棚は書類や荷物が高く積み上がっており、部屋の奥まで見通すことができず、少し薄暗い印象がありました。

記憶の中のオフィスとのあまりの変わりように、とにかく驚きました。社長がある時、これではだめだといらないものを徹底的に社員に捨てさせ、机の上に書類を置かないように決めたということでした。最初はなかなか書類などを捨てられない社員から反発もあったそうです。仕事の面でも社長が自分自身で動くというよりも社員がやる仕事の交通整理をするように変えてから外部の取引を順調に取ることができるようになりました。

そうこうするうちに売上増加に利益がついてくるようになり、当時、年間2か月分程度しか出せていなかった賞与も今では5.5か月分ほど出せているとのことでした。こうなると社員も社長についていけば間違いないと思うものです。また、自分たちの仕事に自信が出てくるのだと思います。当時とは違い、会社は”明るい雰囲気”に変わり、売上も今期は過去最高になっています。

明るい雰囲気というのは「みんなが陽気に雑談して笑っている」というものではありません。社員それぞれがそれぞれの仕事について社員同士で真剣に話をすることでより良いものにしていこうという雰囲気です。

こうなるまでには社長はいろいろ試行錯誤を繰り返されたことと思います。しかしながら同じ事業をしている会社が『社長の考え方ひとつでこんなにも変わることができるのだ』という実例を拝見し、素直に感動せずにはいられませんでした。

中小企業は社長が変われれば社員も変わるものだ、という話を皆様もどこかで耳にしたことがあるかと思います。それは真実だ、と私は改めて思いました。コロナ禍が落ち着きを見せている現在も、会社が疲弊しているという社長が数多くいらっしゃいます。このメールマガジンでも、社長は心中穏やかでないときでも社員には笑顔を見せなければならない、ということを申し上げたことがありますが、こういった身の回りの整理整頓も社員に与える影響は小さくないものだと感じました。

私自身はあまり整理上手でもありませんが、なんとなく事務所の中が雑然としてきたときはやはり全体的に緩んできてしまっていると感じます。それもこれもトップが社員に与えている印象をそのまま社員が鏡に映しているようなものです。

トップが自分を律し続けることができれば、会社は変わります。そして、自分を律しているトップの姿を社員は見ているということを忘れてはならないと私自身が身の引き締まる思いです。