マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

それぞれの苦悩はあるものの・・・

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第139号] それぞれの苦悩はあるものの・・・

2022年11月2日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の139】

『黒字への執念を切らさない経営 』

昨今、外部環境の変化に伴う厳しい経営状況を目の当たりにすることが多い。
そんな状況下で、赤字に慣れてしまってはいないだろうか?

厳しい言い方をすれば、赤字の要因がインフレであろうとコロナであろうと、経済界では赤字は赤字としか見られない。どうすれば最優先で黒字化できるか?考えるのはその一点であろう。

赤字が体質となることがないよう、儲ける意識を絶やさずこの苦境を乗り切って頂きたい。

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コロナ禍で企業価値を棄損してしまった企業は少なくありません。しかしマエサワ税理士法人の顧問先様の中には現状を前向きに捉え、前へ進んでいく社長が多くいらっしゃいます。私自身が叱咤激励を受けていることも間々ございます。

いかに粗利を確保しにいくか

ある飲食店(居酒屋)ではタイミング悪く、コロナ禍に見舞われてからの開店となりました。東京でも夜の街として名高いところでの開店ではありましたが、さすがに来客が少なくスタートから大変な経営状況でした。

夜の営業が厳しいので当初からランチに力を入れていきました。およそ1000円のランチが評判を呼び、夜8時以降に適用された休業補償も併せればなんとか損益トントンのところまで持っていくことができました。

「コロナ禍だからこそなんとか黒字にし、価値ある決算にしたいですね」というお話をしておりましたが、第1期からその通りになり、社長のご努力には頭が下がる思いでした。

社長の黒字化への執念は凄まじいものでした。業者からの仕入価格が高いと見るや自らリヤカーを引いて安売りスーパーで安い食材を大量に購入してきたり、マイナーチェンジを頻繁に行うことでお客を飽きさせないメニューづくりを実践したり、一品ものをメニューに取り入れることで客単価の向上を実現したり。まさに工夫尽くしの経営です。

社会がコロナ禍からウィズコロナへ移行している現在、当初とは別の問題が出てきました。まだまだコロナへの警戒感が強い今、夜の居酒屋としての売上が不安定なことです。ランチがおいしい故に、夜も定食屋としての利用が多いのが悩みどころです。

例えば卵焼きを10分かけて作っても500円、生ビールはサーバーからつぐだけで700円だとすればどちらが稼げるかは自明の理です。やはり居酒屋さんはお客にお酒を飲んで頂いてなんぼの世界ですから、単なる定食屋として利用頂くとなると、想定する客単価の実現は非常に難しいものになります。

それでも社長の努力の結果、徐々に居酒屋として使って頂けるようになってきています。休業補償はなくとも黒字化ができています。あとはコロナ禍で失った店内を回す社員アルバイトさえ見つかれば、というところです。

売り方・売り先にもメスを入れる

別の顧問先様の話になりますが、ある社長が過去に会社を買収しました。この会社の現在の業績が非常に良く、売上高経常利益率(売上高に対する経常利益の割合)で10%を達成しているそうです。

買収した当初は、正直いつダメになってもおかしくない会社だったそうです。社内の組織もうまく機能しておらず、とにかく利益が出ていませんでした。

買収後、社長はその会社で輸出を手掛けることにしました。当時は輸出などやったことがなかったのですが、国内販売の限界を感じ、輸出に舵をきったそうです。

昨今の円安ドル高と商品のクオリティの高さがポイントとなり、輸出売上が大きく伸びました。現在ではグループ会社の中でもトップの利益を稼ぎ出す会社に変貌しております。

これからの日本はよい商品を「輸出」していくということも会社として生き残っていくためのひとつの方策のように感じます。

一円を争う場面でも手を抜かない

私は常々「自社商品の価値を上げることが最重要だ」と申し上げておりますし、それが変わることはないと思っております。しかしながら商売によってはとにかく数をこなすことで売上を上げ、利益を確保していくというかたちもございます。

これに当てはまる顧問先様の話になりますが、この顧問先様でもコロナ禍から組織改革が始まっており、大変なご苦労をされながら更なる変化をさせようと必死に経営されています。

この会社のサービスを受けようとする顧客は1円でも安くサービスを受けようとします。サービスに大きな違いはないので価格勝負になってきます。ですから同業他社が1円下げてくればこちらも1円下げる、といった戦いです。

こういった企業では売上を確保することはもちろんのことですが、人件費、設備費等のコストをトータルで落とすことが必須です。そんな中、コロナ禍で間接部門の人を徹底的に削減してきました。

それでも設備費等はどうしてもかかるものですのでいかんともしがたいところです。残るは業務の合理化となりますが、管理部門が属人的な業務になっているところがあり、これからメスを入れることになっております。つまり、システム化することで属人的な業務を削っていくことになります。

どうしても付加価値をつけづらい、あるいは価格以外に差が見えてこないような事業については、とにかく人を使わない、システム化していくことで人為的ミスの排除をし、生産性を上げていくことになっていくのかもしれません。

ひとつ誤解があるとまずいのでお話しておきますと、この会社の社長はサービスを向上させ、付加価値をつけることで生産性を上げる、という意識は強くお持ちです。営業の次の一手は常に模索し続けるものの、管理の効率化も手を抜かない、というお話です。

今回は3つの事例をご紹介させていただきました。
これからの日本で事業を成功させていくのはますます困難になってくると思いますが、我々マエサワ税理士法人も困難さをよく理解しつつ、経営者の皆様のパートナーであり続けてまいります。今後とも宜しくお願い致します。