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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第145号] 正解の見えない事業承継
2023年1月25日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の145】
『振り返ったとき”よかった”と思える選択を』
継ぐのか、売るのか、それとも潰すのか。
関わる多くの者のことを考えた時、最善を目指す苦悩は計り知れないものとなる。
事業を譲る者として、継ぐ者として、そしてなにより資本主義を生き抜く経営者として、振り返ったときに幸せを築けたと感じられる道を歩むべく、礎となる儲けを今日も積み重ねて頂きたい。
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少し前、大塚家具の事業承継で大騒動があったことをご記憶されている方も多いかと思います。我々の耳にはマスコミが流す情報くらいしか入ってこないので、内幕などはわかりようもありませんが、こんなお家騒動は多かれ少なかれ、どの会社の事業承継でも起きているように思います。
幸多き事業承継とするために何をものさしとするか
事業承継では、承継していく側、承継を受ける側、それぞれに知見、行動力、統制力、忍耐力など様々な力が必要とされます。会社の規模が大きければなおのことです。事業承継の成否には社員はもちろんのことその家族の生活までかかっています。10人の社員がいれば、その人数の2倍から4倍の家族がいるでしょう。100人の社員がいれば、1000人の社員がいれば、会社が守るべき人の数もさらに増えていきます。
社員が増えるごとに、あるいは創業からの年数を経るごとに、会社の社会貢献度も高くなっていき、だからこそ社会的責任も増していきます。
事業承継にはひとつとして同じものはありません。また事業承継の成否が明らかになるのは承継の実行から一定の時間が経過してからです。50年後に会社が今と変わらず、あるいは今以上に社会貢献度の高い仕事をしており、社員もその家族も幸せに暮らしていれば、その事業承継は正解と言えそうです。しかしそれが明らかになるのは50年先なのです。現時点では将来を見越し、当事者それぞれが承継の瞬間に良いと思った考えに沿って進めていくしかありません。
それでも事業承継でどうしたらよいか悩んだ時、何を一番に考えたらいいかといえば、「会社の事業を今後も成長させるためには」という視点で後継者を選ぶことではないでしょうか。中小企業は(本当は大企業もそうだと思いますが)社長の器で成長度合いが決まるように感じています。
実際には、誰が最も会社を成長させることができるかを判断するのも簡単ではありません。事業承継は本当に難しいものだと感じます。
継いだ経営者次第で成長も衰退も決まってしまう厳しさ
誰に事業承継させるか社長が決めた時点では、当然のことながらこの事業承継はうまくいくものとしか思っていません。ところが数年経過すると思ったような事業承継とはなっていないというケースも少なくありません。二つのケースをご紹介します。
【これまで社長の片腕として会社を支えてもらってきた優秀な社員に事業承継したが、業績を落とし赤字へ転落してしまい、前社長が現役復帰されたケース】
前社長が再登板した後、経営の再建に成功し事業を持ち直しました。再登板から数年が経過したのち、再び事業承継を考えるタイミングが訪れます。しかし事業承継を任せられる近親者はおらず、前回の失敗もあったことから、M&Aの形で事業を売却されました。事業売却先が上場会社であったこともあり、社員の皆様のモチベーションも落ちることなく、社員も社長もwin-winの形に着地することができました。
【いったんはご子息に事業を承継したものの、業績を落とし急速に資金繰りが悪化してしまい、前社長が現役復帰されたケース】
前社長が再登板した後、経営の再建に成功し事業を持ち直しました。ただ現状の規模のままでの事業承継はできないと判断され、社長自ら不動産の売却や人員整理などの事業整理を行っていき、事業規模を大幅に縮小したところで、近親者へ事業承継を致しました。
事業承継することで次世代にうまくバトンタッチできれば最高です。それでも残念ながらうまくいかない場合があるのも事実です。そんなときに現役復帰する前経営者は「とにかくもう一度持ち直さなければ」と一心不乱に経営に取り組みます。
こうやって戻ってきた経営者は業績をまさにV字回復させてしまいます。現状のどこに問題があり、どう修正すればいいかの回答を短期間で出し、それをすぐに実行します。多少の出血があったとしてもそこは目をつぶり、とにかく業績回復を第一に突っ走ります。
こういった場面を目の当たりにしてきたからこそ、「経営は経営者次第」だと強く感じた次第です。
事業承継は「株式」の承継にも非常に気を使います。これまでに稼いできた会社ほど「株式」の承継は議決権の面でも税金の面でも、非常に大きなインパクトのある問題となります。
しかしその際であっても、私は「事業を成長させるためには誰が株式を承継するべきか」という視点で判断すべきと考えています。
マエサワ税理士法人に蓄積されたさまざまな事業承継のお話を共有したり、会計的な視点からの意見を述べさせていただいたりといった時間のなかで、社長がご納得いく「現時点で最高と思われる決断」のお手伝いをしていきたいと考えております。
社長だけでなく、社長のまわりの方々でも事業承継にお困りの方がいらっしゃれば、私やマエサワ税理士法人の各担当者にお話し頂ければ幸いでございます。どうぞ宜しくお願い致します。