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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第146号] 税務調査の対応
2023年2月8日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の146】
『立場の違いと目線の違い 』
税務署は法に則っているかという視点で、公平を追求する立場にある。
対して経営者は儲けを追求する立場にある。
正しさの追求をする立場ではないが、違法なことをして儲けようという話では決してない。
これを読む経営者は、王道で儲けるという信念を持った者のはずだ。
うまいことやって得してやろうという考えからは一早く脱皮し、ルールを当たり前に守った上で堂々と儲けを追求して頂きたい。
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コロナショックにより、多くの事業者が経済的なダメージを負いました。それに対し国が様々な補助金、助成金を法人、個人問わず出したおかげで、一定程度救われた部分もあったように思います。
一方で今までにない規模での財政出動であったため、国の台所事情は皆様ご存知の通り、火の車になっています。財源を補うべく、令和5年の税制改正大綱では法人税、所得税、贈与税を中心に全体として増税基調となっております。
税金の徴収漏れがないかを調査する税務調査も、国にとっては平時に増して非常に重要なものです。コロナの第7波が落ち着いてきた昨年夏以降、本格的に税務調査も再開されました。
税務調査件数は元に戻りつつある
ある顧問先様で税務調査があったのですが、規模が大きな会社なので税務署管轄の調査ではなく、国税局管轄の調査となりました。ちなみに資本金が1億円以上になると通常、国税局管轄の税務調査となります。
国税庁の下に12の国税局(札幌、仙台、関東信越、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、熊本、沖縄)があり、これら国税局に税務署がぶら下がっている形です。
今回の税務調査では初日に5人の調査官、以後は4人の調査官が2週間にわたり、会社の経理状況をチェックしていました。
まずはヒアリング。社長はもちろんのこと、営業の現場の方から責任者の方、製造の現場の方から責任者の方からどんな業務をされているのか細かくヒアリングされます。
隣で調査立会をしている我々も話を聞かせて頂いているのですが、これがなかなか一筋縄にはいきません。皆さんそれぞれ調査官の質問に対して回答していきます。ご本人はもちろん間違っていることを話しているなんてことはない、という認識でお話されています。
しかし、税務調査における話し方としては誤解を生じさせる可能性のある内容になってしまう場合があります。とはいえ話の途中で我々が遮るわけにもいかないので聞いているこちらとしてもひやひやすることは間々あります。
もちろん事実をそのままお話し頂ければよいのですが、ついつい話に乗ってしまい、そこまでお話されなくても・・・というところまでお話しされる方もいらっしゃいます。
だからといって事前に「こんなことを聞かれると思うので、こういったことはお話しないでください。」と私が申し上げると、繊細な経理担当者方などは意識しすぎてしまうこともございます。「調査官からの質問に何を話せば良いのかわからなくなってしまった」ということもございました。
調査をする側も”人”である
国税局の調査となると、優秀な方ばかりなので、うまいこと取り繕ってやろうというのはまず無理です。誠実さを見せるというのは大事だと思います。
とはいえ、経理処理の考え方については見解の相違というものは多々あります。すべて相手の言うことが絶対的に正しいかといえばそうではない部分があるから見解の相違がでてくるわけで、ここは調査立会をしている我々が相手に理解を求めていく努力をするところになっております。
税務調査において重要だと感じるのは、調査官と我々、調査官と経理担当者の最低限の信頼関係を作ることです。納税する側、徴収する側と真反対の立場ではありますが、それでもお互いに最終的には妥協していかなければなりません。
お互いが全て折れるということはありません。こちらからすれば税法や会計の諸法令を踏まえて処理している訳で、指摘を受けた部分の全部が全部、相手の言う通りだということはありません。
一方で相手の話をきちんと聞いていくとその部分はおっしゃる通り、ということもあります。その場合は「確かにそうでした」という姿勢をとることがお互いの最低限の信頼関係を作ることにつながります。信頼関係がなければ最終的な着地ができなくなってしまいます。
税務調査を受けること自体、追加徴収がないという「是認」で終われる場合以外、指摘や指導を受ければそれだけ追加徴収を求められる点で好ましいものではありません。
ただこの税務調査という制度があることで経理処理の公私混同を抑止する効果があることは事実でしょうし、正確な経理を行うことで、儲けの一定部分を納税していくことへの納得感を持てるのかもしれません。
もちろんマエサワ税理士法人の職員各位も顧問先様の経理処理をしっかり見ていなければ税務調査で顧問先様にご迷惑をおかけしてしまうことにもつながります。この緊張感こそが我々の提供するサービスの質の低下を防ぐことにつながるのだと確信しております。
税務調査を受けるとなると顧問先様、特に社長のお時間も拘束することになりますし、我々の負担も小さくないものがあります。ただ普段の社長と我々の経営についての考え方の正しさを証明する意味でも「申告是認」を目指して今後も邁進してまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。