マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

企業として強くなるために

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第151号] 企業として強くなるために

2023年4月19日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の151】

『良い商品ですか?良い顧客ですか? 』

「原価が上がっているから利益率を保つために値上げを行う」
こうして文字で読めば、誰もが当たり前だと言うだろう。
だが実際の現場ではその当たり前を恐怖し手をこまねく経営者がほとんどだ。

なぜ自社の商品は原価高を買い手に理解してもらえないのか?
その要因を今一度真剣に考え、改善の一手を生み出す努力が今真に必要な経営努力なのではないだろうか。

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学生の皆さんが春休みに入ってからというもの、新幹線も飛行機も非常に賑わっております。今も新幹線に揺られながらメールマガジンの原稿を作成しておりますが、コロナ禍で一車両に数名しか乗客がいないという時期があったことなど嘘のようです。

週末に近所のショッピングモールを歩いていてもコロナ禍の時とは比較にならないくらいの混雑となっておりました。人間とはわがままなもので、コロナ禍による人影まばらな状態に慣れてしまった分、この混雑には少し気が滅入るところもあります。しかし街に活気が戻ってきたことは間違いなく経済活動にプラスに働くわけですから仕方ないかもしれません。

自ら儲からない経営に足を進めていないか

マエサワ税理士法人の所在地である西新宿周辺でも、コロナ禍でかなりの飲食店が撤退に追い込まれましたが、今では以前飲食店のあった場所に新たな飲食店が続々と誕生しております。外を歩いているときにはマスクを外している人もかなり見かけるようになりました。

一方でマスコミ報道でも報じられている通り、あらゆる原材料が値上げされております。製造業、卸売業、飲食業等業種を問わず原材料高騰による原価率の上昇により、売上増加しているものの、全体としてはコロナ禍前の収益性までは戻ってきていないように感じます。

もちろん、コロナ禍において企業では様々な原価低減努力をされていたので、コロナ禍前よりも損益分岐点売上高は下がってきていたはずです。しかし、それを帳消しにしてしまうほどの原材料高に見舞われてしまい、収益性がなかなか上昇してこない企業が多くなっています。

ある顧問先様での業績報告の席でのことです。原材料高による原価率上昇をカバーするには値上げが重要だという話をしました。その時、役員の方から「値上げをしたら売上数量が落ちてしまう可能性があるので、安易な値上げはできない」というご意見を頂きました。

確かに仰る意味合いはよく理解できます。価格競争をしてきた商品であればその通りになってしまう可能性が高いでしょう。代替商品、代替サービスがある市場であれば、当然に値段が安い方に需要は傾きます。

平成27年に「127万社が事業承継できない」という記事を見ました。この記事はコロナ禍前のものでしたから、コロナ禍で事業承継できない、あるいはしない企業はさらに増加したように思います。
これからの日本は人口減少・高齢化、さらには上記のように事業承継がままならず企業数の大幅減少が起こります。今ある企業数がたった20年から30年後には半減している可能性が高いのです。そういった状況で価格競争をしても縮んでいくパイの取り合い競争にしかならず、中小企業は資金力のある大企業にたちまち飲み込まれてしまうでしょう。

ですから令和以降の日本で生き残るためには、なによりもまず「価格競争に巻き込まれない商品・サービスを創る」ことです。もちろん、これが簡単ではないことは明白です。

淘汰の波に飲まれぬためにも不断の商品・業態開発を

政府の政策を見ると、最近しきりに賃金アップを口にしております。この30年間ほとんど賃金水準が変わらず来ていたものの、デフレのおかげでそれが目立たないために文句も出ませんでした。それがここにきて原材料高騰で国民の不満が爆発しかねない状況になったため、企業に対して賃金アップを求めてきたのは誰が見てもわかります。

ただ企業としては収益性が悪化している中で賃金アップをすればさらに窮地に追い込まれます。それでも政府がこういった政策を推し進めているのは、いよいよゾンビ企業の市場退出を本気で求めているからではないでしょうか。

昭和の時代のように護送船団方式で全ての企業を守るというのは、財政的に困難になった令和の時代には通用しません。「きちんとした価値を提供でき、社員に一定以上の給料を払える企業だけしか助けない」という、方針の大転換が(遅ればせながら)始まったということだと思われます。

「値引きは経営ではない」「値決めは経営そのもの」とは故稲森和夫氏の言葉ですが、まさに消費者に受け入れられるために商品・サービスの価値を高め、こちらの求める価格で販売させて頂く、というまっとうな商売をしていくことがこれからの時代を生き残るためには必要不可欠になってくるはずです。

令和になったからこうなったわけではなく、昭和であっても本来はこうだったはずです。ただ昭和は経済成長期であったため、需要は右肩上がりで労働人口も若く人件費も安かったので低価格戦略でもやっていけただけの話です。

とはいえ、低価格戦略をとっていた企業が長期にわたり成長発展を遂げる例を、私は思い出せません。値下げ競争に参戦すると、次の「儲け」を生むための投資に向ける原資を蓄積することが非常に難しくなります。トヨタが生き残っているのはもちろん時代に合わせた製品開発を不断の努力で行ってきたことはありますが、やはり付加価値の高い製品を扱っていること、それを一定水準以上の価格で販売できていることが大きいように思います。

いばらの道が続く様に思いますが、やはりお客様に喜ばれる商品・サービスの開発を不断の努力で行っていくことにより、生産性を上げていくしかありません。マエサワ税理士法人職員ともども社長の皆様と一緒になり生き残る術を考えてまいりたく存じます。引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。