マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

成熟業界の厳しさ

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第156号] 成熟業界の厳しさ
 

2023年6月28日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の156】

『”当たり前”に価値はない 』

成熟期に入った業界は価格競争が付いて回り、儲けづらい。だが嘆いても始まらない。
成長期・成熟期どちらの業界でも、儲けの王道は商品・サービスの開発、業態開発、付加価値の創造である。

時代や環境の変化により、顧客がその価値に慣れれば、それは”当たり前”となり、もはや価値とは呼べなくなる。
潜在顧客や潜在需要を掴むべくアンテナを常に張り直し、金を払う相手が感じる価値を追求して頂きたい。

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盛大な文化典への参加と業界の実情

先日、印刷業の経営者が会員となられている社団の総会に出席してまいりました。この総会は毎年開催されております。今回は高知県での開催でした。

総会自体は土曜日の午後にあるのですが、それ以外にも様々なイベントがあり、なんと木曜日から日曜日までの4日間という長丁場の大会です。その地域の様々な風土、風俗に関連した催し物が企画され、他地域から来た会員を楽しませる観光やゴルフなども開催されます。

メインイベントは3日目の総会後に行われる大懇親会です。会員である印刷業の社長の皆様やそのご家族、多くの来賓を含めると出席者は300人を優に超えます。今回の大会は高知で開かれましたので、カツオに日本酒を合わせて、高知名物のよさこい祭りに実際に参加されている踊り子さんと一緒になって、みんな「よさこい鳴子」を両手に持ち、お祭りさながらにハッピを羽織って舞っておりました。

私はこの社団の監事として総会に出席させて頂きました。懇親会で美味しい食事とお酒に舌鼓を打っており、年に1回の顔合わせを楽しませていただきました。

今回の高知大会の準備は1年以上前から始まっていたそうです。毎年開催地は変わります。お話を伺うと、例年準備は最低1年前には始まるということでした。ご来賓の中には県知事や市長もいらっしゃいますし、ホテルをおさえたり、催し物を開催する際の踊り子さんをおさえたりと、準備のご苦労は私には想像もできません。毎回、懇親会が終わるときには涙が出るくらいの感動があります。

ところで、この社団の会員である印刷業にとって経営という面で見ると実情はかなり厳しいのが現実です。

もともと昭和の終わりから平成の初めにかけて、一般企業にPCが普及しプリンターによる印刷ができるようになった時が最初の躓きだったのかもしれません。年賀状などもそれまでは印刷屋さんに印刷してもらっていたものが家庭で印刷できるようになりました。

世の中的には便利になったわけですが、印刷業を営む方々からすると需要減少となるわけですから、当然に経営が苦しくなることを意味しております。

さらに最近では紙媒体が電子媒体に変わろうとしています。年賀状ももはや若い世代では送る習慣がなくなりつつあり、LINEなどのSNSで済ませてしまう若者がほとんどになりました。企業でも経費削減も兼ね、年賀状を送るのを止めた、というお話しもよく聞きます。世の中の流れは確実にペーパーレスに振れているように感じます。税務調査でも紙よりデータでもらった方が分析しやすいので、調査書類をデータで渡す機会が増えてきました。これらの時世が印刷業界をさらに苦しめております。

成熟した業界でいかに儲けるか?

マエサワ税理士法人にも印刷業をされている顧問先様がいらっしゃいます。私が現在伺っている印刷業の顧問先様は地方に拠点を置いておりますが、近所の同業者が廃業し始めているそうです。

仕事がないことはないのですが、とにかく単価が安すぎて利益が出せない。紙代、インク代、機械代は全て確実に上がっているにもかかわらず、値上げできないのが現状だそうです。

上述の顧問先様では、単純な印刷ではなく、デザインの提案から始まり、例えば日本語表記だけでなく英語や中国語表記など印刷そのものではないところに付加価値をつけて対応されています。

こういった付加価値をつけることで、その顧問先様の粗利益率は6割を超えています。規模は小さくマンパワーにも限りがある中、生産性の高い仕事を開発して生産性の低い仕事から脱却を試みております。

さきほどの社団でもデザインコンクールやDX発表会などを催して、いかに印刷という仕事に付加価値をつけるかについて、会員に啓蒙されています。

とはいえ、業界として成長期から成熟期を過ぎてきている、ということを認めざるをえません。そこからの巻き返しは非常に厳しいものがあります。この社団の会員数は、コロナ禍前には1000を超えていました。今は750です。

実は我々税理士業界も同じです。コロナ前にITが盛り上がった時にも10年後になくなっている可能性のある業種に選ばれています。

どんな業種、業態、あるいは一企業であろうと結局、世の中の役に立たなければ、あるいはお客様の役に立たなければ消えてしまう運命にあるのだと思います。

世の中は常に変わり続けています。その変化に我々自身が対応できなければ市場退出を余儀なくされます。

厳しいようですが、経済合理性から外れれば、過去どんなに隆々としていた企業であっても明日どうなるか分かったものではありません。付加価値探しは非常に困難を極めますが、これができれば明るい将来が見えてきます。税理士業界も印刷業界もその他の業界も皆同じです。社長の皆様、令和という時代は大変な時代となっていますが、やってやれないことはないですから是非とも前向き、上向きに頑張ってまいりましょう。