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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第160号] 社長が会計事務所に求めるもの
2023年8月23日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の160】
『顧客は何にお金を払うのか? 』
お金を払う側の顧客に興味を持って思考をしないというのは、儲けに興味がないと言っているのと同義である。顧客が何を考え、何を求めているか?を切り口として、儲かる商品・サービスを追求して頂きたい。
また、いかに役立つ商品・サービスを提供しても、適正な対価をもらえなければ、それはボランティアと変わらない。適正な対価を理解してもらえる顧客を顧客とする意識も時には必要だろう。
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前号に引き続き、税理士試験のお話から。8月8日(火)から3日間で令和5年度の税理士試験が実施されました。そして試験後の週末2日間、マエサワ税理士法人でも毎年恒例の採用試験を行いました。
マエサワ税理士法人では例年この時期に行う採用試験によって、基本的に4月入社の方と9月入社の方をそれぞれ1名から2名定期採用してきました。新卒あるいは大学院卒の方が採用の中心となります。一部、金融機関出身の方を採用していますが、同業者で働かれていた方は採用しておりません。
会計事務所といっても事務所ごとに組織風土は異なります。同じ業務でも進め方に大きな違いがあることも少なくありません。なにより「職業会計人としての心の持ちよう」は、会計事務所によって全く異なると言って良いでしょう。ですから他の会計事務所の色に染まった人を採用するより、そういった色に染まっていない新卒の方を採用した方が、すっとマエサワ税理士法人になじんで頂けるのではないかと考えております。
顧客の役に立つ商品・サービスでなければ生き残れない
そんなこんなの採用活動ですが、最近の採用活動を見ていると税理士業界を就職先に選ぶ学生が大きく減っていることを感じます。単純に他業界に比べて相対的に魅力が減っているからでしょう。「魅力」は人によって違うと思いますが、仕事のやりがいや給料が主なところでしょうか。
最近では税理士業界に入ってくる求職者とお話をしていると、必ずと言っていいほど、「試験休暇はもらえますか」「残業はありますか」ということを聞かれます。
資格業ということもあり、多くの人が知識さえあれば食べていけると思っている節があります。それほど甘い世界ではないと思いますが、私自身が受験生の頃を思い返してもやはり資格さえ取ればなんて思っていました。ここに資格業の特殊性が隠れているように思えます。つまり資格=仕事が保証されている、という勘違いです。
今思えば資格を取得したとしても、それは資格を名乗れるというだけで仕事がくる、あるいは仕事を創れるようになることではないという当たり前のことを全く理解してできておりませんでした。
税理士登録者数は日本税理士連合会によると令和5年度1月末で80,467人、また税理士事務所数は総務省統計局「経済センサス」によると平成28年調査時で31,208事務所となっております(公認会計士事務所を含む)。
令和3年度現在、申告法人が280万法人ございます。いつも申し上げているように20年後くらいには半減する可能性があります。会計事務所も合併などが盛んになっておりますが、さすがに半減まではしないと思われます。5人以下の会計事務所が大半を占めているからです。そうなれば顧問先の取り合いは火を見るより明らかです。顧問先様に役立つという意味で本当の実力がなければ会計事務所も生き残っていけません。
自分がやりたいことではなく、顧客が求めることに注力する
少し横道にそれますが、税理士試験でどれくらい勉強しなければならないかというと、一般的に1科目およそ500時間から600時間程度の勉強時間が必要とされます。税理士になるために必要な5科目を揃えようとすればおのずと2500時間から3000時間の勉強時間を必要とすることになります。
学生の時から税理士試験を始める人が多いですが、社会人になってから1科目ずつ取る形で受験を始める人もおります。マエサワ税理士法人を退職した役員が昔、「税理士試験に合格するためには仕事・遊び・勉強のうちひとつを諦めなければならない。つまり遊びを諦めるということ」と話していました。実際にプライベートを勉強に割く生活となります。平日の夜や土日に専門学校へ通いつつ、空いた時間で勉強した理論を空で言えるように暗記しなければなりません。
「だから税理士はすごい」などと申し上げるつもりは毛頭もありません。むしろ税理士資格を取得すればそれなりに暮らせるなんていうのは今となっては幻想で、それは昭和の高度経済成長期で終わっていることを強く感じます。
社長が経営相談されるなら「頼りない税理士」と「税理士資格はないけど税務知識に長けた気の利く人」のどちらにされますか。申告業務は税理士しかやれないにせよ、こと経営に関わる部分については気の利く人に相談されるのではないでしょうか。もちろん、全ての税理士が頼りない税理士ということではないですが、残念ながら社長の経営に興味を持てない税理士を見かけることも少なくありません。顧問先様が真剣に挑んでいる経営について私たち自身が興味を持つというのは、最低限の心持ちだと私は考えています。
税務会計は最終的に税金という「銭」が出ていくところにつながるので、軽視することはあり得ません。また税務に関わる資格で仕事をしている以上、そのレベルを下げてよい訳がありません。マエサワ税理士法人も今まで同様、業界水準を上回る水準の税務知識を備えて顧問先様へ役立つ提案をしていきます。
それと同時にやはり社長と共に考え、社長と共に成長し続け、社長の経営の一助となるべく知識面だけでなく、人としての懐の深さ・器の大きさを身につけてまいります。そして成長を続ける社長にいつまでも必要とされるマエサワ税理士法人であるように努めてまいりますので、今後とも引き続き、宜しくお願い致します。