マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

役員報酬の金額の妥当性とは

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第161号] 役員報酬の金額の妥当性とは

2023年9月6日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の161】

『給料と報酬 』

社長は会社の経営が傾いた時、その責任を問われる立場にある。
特に中小企業では家族をも巻き込み、この借金をどうするのか?という話になる。
そのリスクを常に背負い続けることが社長業であり、その対価である報酬は給料とは一線を画す。

ただし、いくら?の基準がないからといって、そもそも稼いでいなくては話にならない。
儲けられる企業だからこそ、報酬を満足にとれ、社員も給料に文句が出ない構図が生まれるわけだ。
人事に関わる問題は尽きないが、根本の問題がどこにあるのかは見失わないようにしたい。

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顧問先様へ伺うと役員報酬についてのご質問を受けることがございます。役員報酬には様々な税務上の論点がありますが、先日「他の社長はいくらくらい取っているのか」「自分はいくらくらいとっても良いのか」というご質問がございました。この点について、私の考えをお話ししたいと思います。

稼ぎと責任に見合った金額を

実際には事業が回っていて、儲けが出ている状況であれば基本的には役員報酬をいくら取られても問題はありません。

ただし税金的なお話をすると給与所得が増加するにつれ所得税率は上昇していきます。年間で4000万円を超える給与所得になると所得税率45%と住民税率10%で合わせて55%となります。これが現在の日本の所得税の最高税率です。

だからといって、十分に稼がれている会社であれば、社長が年間4000万円を超える給与所得を得ても取りすぎだということにはなりません。稼ぎに見合った報酬を頂くのは当然のことです。むしろ税金を払った残りの手取り収入のところで社長自身(個人)の貯えを増やしていくという考えもあるように感じます。

社長個人の貯えは金融機関からの融資を受ける際にも確認されることもありますし、そもそも事業経営が常に安定的に成長していくということはまずないので、万一に備えて社長個人でもある程度の貯蓄をしておく必要はあろうかと思います。そのためには高い所得税の納税もやむなしという考え方もあるのではないでしょうか。

役員報酬は会社で十分に稼いでいる限りにおいてはいくらとっても問題ないとお話しましたが、それでもいくつか考慮しなければならないことがございます。

例えば、①社長が役員報酬をいくら取ったとしてもある程度社員に納得性を持たすことができている、②そのために社員にも業界水準を多少なりとも上回る給料を出している、といったことが挙げられます。

経済合理性の観点から

社長がいくら給料をとっても社長が事業リスクを背負って事業をされているのですから、そういう意味では基本的にはいくらでもよいというのがこれまでのお話です。

しかし、一緒に事業をやっている社員の納得性が低い場合には不満が出てきかねません。もちろん人事権に関わるところは社員に一切非公開の会社も多いですから、社長がいくら役員報酬を取っているかわからない会社も多いのは事実です。それでも社長の普段の行動を見ていればそれなりに所得水準というのは分かるものです。

社長は相当額の役員報酬を取っているにもかかわらず、社員の給料は業界平均を下回っていれば、社員のモチベーションに悪影響を及ぼしかねません。会社の業績にも悪影響を与えるでしょう。

大前提として業績向上に活躍した人には高い給料、そうでない人はそれなりにという評価をする。そういった意味での公平感は非常に重要ではありますが、そもそも社員への給料のパイ自体が現状程度でよいのかどうかを見ていく必要はあるかもしれません。

社長の役員報酬の多寡に関わらず、社員が自身の給料の少なさに不満を抱いているケースもございます。「業界平均を上回る給料を出せているか」は経営上重要な指標のひとつと言えます。事業の稼ぎが十分でない、単純に人が多すぎる、といったケースでは、平均以上の給与の支給は難しいでしょう。「その社員の貢献度に応じた給料を出せているか」という視点も必要です。貢献度を反映することができる給与規程になっているか、確認する必要もございます。

すこし話が役員報酬からそれてしまいました。話を戻すと、社長の皆様は経営者というリスクの高い商売をされています。私は「社長の皆様にはどんなに少なくても月額100万円くらいの役員報酬は取って頂きたい」と思っております。

社員は会社が嫌になれば辞めることができます。しかしながら経営者の場合なかなかそうはいきません。借金があれば会社をたためません。その他にも様々なしがらみもあるでしょう。しかし、社員の給料と変わらない報酬ですべてのリスクを負うというのでは、果たして何のために事業家を目指したのかわかりません。

もちろん、お金だけのために経営者になったわけではない、ということは重々承知しております。社会貢献を大きく掲げられている経営者の方もいらっしゃいます。ここではあくまで「経済合理性という考え方から見た」役員報酬の捉え方としてお読み頂ければ幸いです。

経済合理性が最も重要ではありつつ、役員報酬や給料は全ての人にとって生活に直結する話でもあり、どうしても感情面に配慮すべきところもあります。

ご不明点等ございましたら是非ともマエサワ税理士法人担当者にご質問頂ければと存じます。どうぞ宜しくお願い致します。