マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

御社の労働分配率はどれくらいですか

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第162号] 御社の労働分配率はどれくらいですか

2023年9月20日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の162】

『儲け続けていく体制をつくる 』

昨今、インフレと合わせて賃上げの影響が辛く企業にのしかかっている。
権利ばかりを主張されたところで、頭の稼ぎを増やさねば今の給与も維持できないというのが現実だ。
ただこの経営者の思考をいち社員に理解させ意識を変えてもらうことは至難の業である。
腹落ちさせ行動に移してもらうには、長い時間の我慢と根気が必要であるが、これが社員教育でも肝となる部分だろう。
良い商品と良い顧客をよく理解した”儲けられる”社員へと導いて頂きたい。

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いつも歩く道に、清掃会社のアルバイト募集の広告があります。時給はもともと1200円だったものが、時給1600円に書き換えられていました。思ったように人を集められなかったからでしょう。

マエサワ税理士法人の顧問先様の中にも居酒屋を営まれている会社があり、時給1300円でも人が集まらず時給を上げているところがございます。最近はどこでも時給が上がっていることを感じます。

人件費の増加の波を乗り越えられる企業であってほしい

東京都の最低賃金は、令和元年度に初めて1000円の大台を超えて1013円となりました。令和5年度現在、東京都の最低賃金は1113円となっております。

上げ幅を見ると、令和元年28円、令和2年0円、令和3年28円、令和4年31円、令和5年41円となっております。実は平成時代も東京都の最低賃金は平成19年以降、毎年20円前後ずつ上昇しておりました。

令和4年、令和5年については上昇率も上がっておりますが、それ以上に実体経済の方が賃金上昇率は高くなっているように感じます。企業の人件費負担は当然大きくなっていきます。

では企業側の利益はどうなっているのでしょうか。財務省が出している法人企業統計によれば、日本全体の法人の2022年度の売上高は1,578.4兆円(前年比+9.0%)、うち製造業が436.3兆円(同+8.6%)、非製造業が1,142兆円(同+9.2%)となっているそうです。

2020年度のコロナ禍から順調に回復し、2年連続の前年比プラスとなっております。経常利益は952,800億円(前年比+13.5%)、うち製造業が346,506億円(前年比+4.4%)、非製造業が606,293億円(前年比+19.5%)となり、こちらも2年連続の前年比プラス、2021年度に続き過去最高を更新する結果となっております。

こういった結果から見てもしっかり儲けを出している企業があり、そういった企業に対し、国も政策的に賃金アップを要求しております。逆に言えば、利益を上げられない企業はもう助けられない、ということを言っているようにも思えます。

稼ぎが上がることで給与も上がるという儲けの好循環を目指したい

マエサワ税理士法人の担当者は、毎月の社長とのご面談の際に一人当たりの生産性についてご報告させて頂いていることと思います。これは社員一人当たりの月当たりの粗利益額のことですが、この金額の約半分が社員一人当たりの人件費となるのが一般的です。

そして社員一人当たりの人件費÷社員一人当たりの生産性(粗利益額)=労働分配率という経営指標になります。

労働分配率とは「粗利益額のうち人件費がどれくらいを占めているか?」を表す数値です。上述の通り、およそ50%が一つの目安になります。

一人当たりの生産性は月当たりで言えば最低でも70万円は欲しいところです。労働分配率を50%とすれば、70万円×50%=35万円が社員一人に対する人件費となります。35万円には会社負担分の社会保険料が含められているので、それを差し引けばおよそ31〜32万円程度の給与支給額ということになります。

この数字でいくと、社員の年収は32万円×12ヶ月=384万円となります。

日本の平均的な年収は500万円ですから、100万円以上足りません。そこで足りない分無理に人件費を膨らませることで、本来会社として出せる人件費以上の人件費をかけることになるので、結果として、労働分配率は60%、70%と高くなっていき、会社として必要な人件費以外の固定費の支払いが行き詰まり、将来への投資ができない状態になってしまいます。

これからの日本では人件費はますます増加していくと思われます。黙っていると労働分配率はますます上昇(悪化)してしまいます。

人件費が増加しても、労働分配率を50%程度に抑えるためにはなんとしても粗利益額を増やすしかありません。

労働分配率=人件費↑÷粗利益額↑=50%を維持

最低でも人件費の増加率と同等だけ粗利益額を増加させなければ事業継続が難しくなるのは自明の理です。

1.良い商品を創る
2.良い顧客を創る
3.良い商品と良い顧客をよく理解している社員を創る

業務の自動化、効率化は多くの顧問先で進められています。それはそれとして、 いずれにしても人がいなければ事業ができません。優秀な人を採用したいと思っても、なかなかそれを見分けるのは困難ですし、またいらしたとしてそれなり金額の投資になるでしょう。

長い目で見れば「良い商品と良い顧客をよく理解している」社員を創るために常日頃から社長の事業に対する考え方を社員皆様に繰り返しお伝えし、まずは理解して頂き、そして実践してもらい、稼ぎを増やしてもらう、結果として給料が増えていく、ということを体認体得してもらうことが非常に重要であると感じます。

業績の良い会社の経理担当者と話していると、「儲けよう」という意識を感じる場面があります。儲かる会社というのは、先で述べた社長の事業に対する考え方が隅々まで浸透している会社と言えるかもしれません。営業は勿論、工場の作業員や事務員といわれる方々まで、意識の高い集団であることが、これからの競争を生き抜く要件となることは間違いないでしょう。

大きな時代の変わり目にあるように思いますが、マエサワ税理士法人も社長の皆様と成長すべくやってまいります。引き続き、宜しくお願い致します。