マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

覚悟を持たせた言葉

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第163号] 覚悟を持たせた言葉

2023年10月4日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の163】

『言葉のちから 』

相手のことを思って口にする言葉が全くといって相手に響かないこともあれば、何気ない一言が相手の一生に大きな影響を与えることもある。

受け手がどのように捉えるかを量ることはできないが、 少なくとも自分事として考えようともしていない言葉が相手に届くはずもなく、ややもすれば感情を逆撫ですることにもなろう。
日々の言葉の積み重ね一つ一つが、相手との関係性を築いていることを常々心に留めておきたい。
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様々な業種の社長とお話ししていると、自分自身に多くの気づきをもたらせて頂けます。正直、お金を頂いているにもかかわらず、社長からの一言を大変有難く感じることは少なくありません。一方で、社長の皆様からもあの時、あの時にこんな言葉を言われたことが忘れられない、と仰って頂くこともございます。今回お話しするのは、当法人会長の前沢に対する顧問先社長の言葉の一部です。

どちらを選びますか?

ひとつ目は福島県の印刷会社の社長とその奥様のお話です。昭和50年初めからずっとマエサワ税理士法人(当時は前沢会計事務所)が顧問税理士として入らせて頂いておりました。途中10年間ほど別の税理士に顧問が変わった時もございましたが、今また、マエサワ税理士法人が顧問税理士となっているお客様であります。

税務顧問契約を再締結した際、私は福島県を訪れました。社長の奥様に新幹線の最寄駅まで送って頂いている車中でのお話です。奥様が「前沢会長の話で今でも覚えていることがあるんですよ」と仰ってからこの話が始まりました。

かつて、こちらの顧問先様はそれまで順調に業績を伸ばされていたのですが、大口の取引先が倒産してしまい、多額の手形が焦げ付きました。資金繰りに大きな影響を与える焦げ付きでした。もはやこれまでか、と奥様も諦めかけていたほどだったそうです。

その時に、会長の前沢が机の上に鉛筆を立て、「この鉛筆を右に倒せば、倒産でおしまい。左に倒せば、再起を期してやっていく。さて社長は右、左どちらを選択しますか?」と社長に申し上げたそうです。

どちらを選択しても社長の選択の問題です。会長の前沢も倒産させたい訳ではなく、とはいえ生き残るのも生半可ではない状況を社長にしっかり把握して頂き、いずれを選択するにしても社長自身に覚悟が必要だということをお伝えするために鉛筆を使って申し上げたのでしょう。

「あのときのことはずっと忘れられない」と奥様は私にお話しくださいました。今はこの顧問先様も息子さんが後を継がれ、コロナ禍で厳しい業績だった時もございましたが、今期は新たな試みが成功し、順調に業績を戻してきております。

決死の覚悟

ふたつ目は歯科医の先生のお話です。この先生はかつて勤務医として働かれていましたが、歯科医を経営されていたお父様の引退に伴い、お父様の歯科医院を引き継ぐために戻ってきました。

この歯科医院はアパートの1室にあり、建物もお世辞にも新しいとは言い難く、新規の患者さんを呼び込むには苦労しそうだと直感的に感じたことを今でも思い出します。先生にお会いするために私と会長の前沢の2人で伺いました。挨拶もそこそこに業況等について先生からお話を伺いました。それを聞いていた会長の前沢が先生に対して発した言葉が「自己破産じゃないですか」というものでした。

私も同行していたので、先生のお話を同じように聞いており、経営的には非常に厳しいと感じていました。先生とご家族が普通に暮らしていく分にはそう問題にならないのですが、医学系の進学を希望している2人のご子息の進学を考えると、診療収入の増加が必須ですが、この時点ではそれができるかどうかは非常に厳しい状況でしたから、今思えば、「自己破産」というのはまっとうな回答のように思います。

会長の前沢が発した「自己破産じゃないですか」という言葉を聞いた先生のお顔には涙が伝っていました。正直、私はそこまで言ってしまうか、と思いました。でも先生からしても会長の前沢が決して他人事で言った言葉ではなく、自分事として言った言葉だと感じたからこそ涙が出てきたのだと思います。もし他人事で言っていたら怒りを感じていたでしょう。

それを聞いた先生は、「自分の置かれている状況はよく理解できました。しかし息子が希望する医学系の大学への進学を諦めることもしない。」と言い切りました。

それからは奥様と二人三脚、土日祝日返上で働かれました。以前よりも自費の収入を増やすことに成功し、途中資金繰りが悪化した際にはなんとか金融機関からの融資を取り付け、ついには無事ご子息2人の大学院卒業を迎えられました。

先日、この先生と月次監査でお話ししていると「あの時、先生(会長の前沢)から『自己破産するしかない』という言葉があったからこそ、ここまでやってこられた」というお話を伺ったときに、税理士の一言が歯科医の先生にこれだけの覚悟をさせることがあるのだ、と思いました。

いま、私がマエサワ税理士法人を運営する上で、最も重視していることのひとつは「他人事でなく自分事として社長と対座する」ということです。上辺だけの発言はその場を収めるには都合が良いかもしれません。しかし我々は、親身になって発する言葉の重みを重視する会計事務所でありたいと考えています。

マエサワ税理士法人と職員一同はこれからもこれまで同様に、顧問先様の儲けに役立つご提案をさせて頂くべくレベルアップに努めてまいります。どうぞ宜しくお願い致します。