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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第165号] 儲けに対する貪欲さ
2023年11月1日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の165】
『自ら儲けを狭める思考をしない 』
GDPを一つの目線としたとき、我が国はほぼ成長が止まっており、相対的に稼げない国となってしまっている。その厳しい環境下で稼ごうとしている以上、儲けようという気持ちに上限など持ってはならない。
昨今国は賃金上昇による経済の好循環を謳っているが、卵が先か鶏が先か、我々はまず儲けを出さなければ何も始められない。
人には謙虚に、儲けには貪欲に。他社に、世界に負けない成長を目指したい。
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10月1日よりインボイス制度が開始されました。顧問先の経理担当の方々は、新しい制度に神経を尖らせていらっしゃることと思います。導入前の準備段階からご負担は相当なものでしたが、しばらくは事務負担が重い日々が続くかもしれません。やはりこの制度には実務上の問題点があるように思えます。今後制度の内容に変更が加えられることもあるでしょう。最新情報が入り次第、マエサワ担当者からも逐次お話させて頂きますので、宜しくお願い致します。
-世界GDPランキング- 日本が4位に転落
さて、今朝(10月30日)に「やっぱり抜かれたかぁ」というニュースが私の耳に飛び込んできました。内容は「2023年、日本がGDP(名目国内総生産)でドイツに抜かれ、3位から4位に転落する見通し」というものでした。
読売新聞オンラインの記事によれば、国際通貨基金(IMF)の最新予測で、2023年の日本の名目GDPはドルベースで4兆2308億ドル(約633兆円)となり、ドイツの名目GDPの4兆4298億ドルに抜かれ、4位に後退する予測とのことです。ちなみに1位はアメリカで26兆9496億ドル、2位は中国で17兆7009億ドルとなっています。
どの記事を読んでも昨今の円安ドル高が主要因と書かれております。確かに円ベースをドルベースに変換する際に割る数が一昔前の110円から現在の150円に変わるわけですから、これが主要因のひとつであることは言えると思います。ただ本当に為替変動の影響だけかといえば、多くの社長の皆様も感じていらっしゃる通りだと思います。
上述4か国のGDP推移を見ていくと、日本は2010年中国に抜かれて3位に転落しております。中国とは逆転されて以降はその差は開くばかりで、2023年の予測数字で見る限り、4倍以上の開きが生じております。それでも2022年まではなんとか3位を堅持しておりましたが、いよいよ今年ドイツの後塵を拝することになりそうです。そんな中、アメリカは数字で見る限り経済にあまり好不況の変動がなく、安定して1位の地位を堅持しております。
為替の変動はもちろん日本のGDPがドイツに抜かれる一つの要因であることは間違いありません。ただもう少し数字を眺めていくと別の見方もあるように思います。
総務省統計局によれば2022年の日本の人口は1億2494万人だそうです。2023年の日本のGDPを人口で割れば、一人当たりGDPは33,862ドル(150円/ドルとすれば約500万)となります。一方、2022年のドイツの人口は約8400万人前後のようです。同じように一人あたりGDPを算出してみると、50,592ドルとなります。
国の人口全体で割ると労働していない老人や子供も含まれるので、生産年齢人口(15歳から64歳)で割るより、数字は当然低く出てきますが、国全体の指標の一つであるGDPを国全体の人口で割ることによって算出される一人あたりGDPを比較する意味はあると思われます。
円安ドル高の影響が大きかったとはいえ、日本の一人あたりGDP33,862ドルとドイツの一人当たりGDP50,592ドルでは1.5倍近い開きがあります。国民一人当たりの稼ぎがドイツ人は日本人の1.5倍あるということです。
為替変動の影響があるのは確かだとしても、やはり日本人の稼ぎ方がドイツ人に比べて効果的ではない、と言えるでしょう。
効率をいくら上げたところで効果(付加価値)が上がらなければ意味がない
さて、昨今、日本では猫も杓子も「もっと効率的に作業をしなければ生産性は上がらない」ということを言っておりますが、本当にそうでしょうか。
確かにAIの発達により、インターネットが登場した時以上の変化が起こっています。実際に非常に効率的な作業ができるようになったのも事実ですし、これからますます便利になっていく部分があると思います。
便利なAIを駆使してサービスを提供しているところはますます反映していくでしょうし、またこの業界を目指して新規参入がずっと続いていくでしょうから、経済戦争もさらに過熱していくでしょう。
しかし直接AI自体に携わる企業は全体からすればごくわずかではないでしょうか。AIを自社技術と組み合わせて商品化、サービス化することで付加価値のある商品、サービスを生み出す会社も相当数出てくるとは思います。しかしほとんどはAIを使っていく会社のはずです。そういった会社はAIを使う側であって、あくまでも作業の効率化が主な使途となるところが多いように思われます。
何を申し上げたいかといえば、AIに乗ろうが乗るまいが付加価値の高い商品、サービスを持っていなければ、国であろうと会社であろうとやがては衰退してしまうということです。
日本にも世界に誇れる人や技術は山ほどあります。ただアメリカ人や中国人のように商売がうまくないように思います。
私はサッカーの日本代表の試合が好きでよく見るのですが、あれには国民性がよく表れるように思います。日本チームを称して「皆がよく動く、さぼらない、忍耐力が強い、謙虚」と言われる一方で、「俺が俺がというギラギラした人が少ない、全体的に小粒、真面目過ぎる」とも言われます。
南米には「マリーシア」という言葉があり、これは「ずる賢さ」を意味するそうです。日本人サッカー選手にはマリーシアが足りない、とずっと言われ続けてきました。しかし多くの日本人サッカー選手が海を渡って世界のサッカーリーグに挑戦することで、精神的な逞しさ、タフさを感じさせる選手が多く生まれています。
インタビューを聞いていても一般的な日本人にはない精神を持つ選手が増えました。日本人としての良さを出しつつ、世界中で揉まれた精神力を備えたハイブリッド型の日本人です。うまくは申し上げられないのですが、商売においても外国人の持つ儲けに対するハングリーさを取り入れていく必要があるように思います。
これまで、私はたくさんの関与先社長様とお話をしてきました。その中で学んだ会社の成長を阻害するもののひとつに「自社の儲けはこれくらい」という固定観念があります。自らリミッター(出力制限)を設定してしまうのです。儲ける社長というのは、このリミッターを設定しません。貪欲にギラギラと儲けを追求し続けます。アメリカや中国やドイツの経営者も、世界のサッカーリーグの選手も、リミッターなど気にしていません。
我々は、真の資本主義を身につけるときなのかもしれません。