■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第167号] RPAの現場を見て感じたこと
2023年11月29日 配信
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の167】
『儲かるか?儲からないか?の視点を忘れずに 』
効率化されて作った時間を効果に充てる。
口で言うのは簡単だが、効果という言葉一つとっても捉え方は人それぞれだ。
誰に対しての効果か?従業員が満足するだけなのか、顧客満足に貢献できるのか。
儲けを追求するためにも、効率化を通して目を向ける場所を違えてはならない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先日、RPA(Robotic Process Automation=業務の自動化)を推進している仙台の会計事務所を見学してまいりました。
昨今、会計システムのクラウド化や、仕訳計上の半自動化など、経理の周辺業務も効率化が進んでおります。RPA(=普段従業員がパソコンを使って行っている作業をソフトウェアロボットに覚えさせることで自動化を図るものです)となると我々業界は遅れていると言わざるを得ません。今回は、マエサワ税理士法人でもこのRPA導入検討を考えるべきものがあるかどうか見極めるために見学に伺った次第です。
最初に見学した会計事務所の方が仰っていたのは、「RPAを進めていくために重要なことは、最初に効率化を求めない」ということでした。いざRPAを実行しようとするとビッグプロジェクトになりがちで思うように進捗しなくなり、嫌になってしまうそうです。
そうではなく、「こんなお助けロボがあればいいなあ」「面倒な業務をロボットにやらせたらいいなあ」というところからスタートしていくとうまくいきやすい、ということでした。小さな成功体験の積み上げということなのかもしれません。
またRPAを称して「将来の会計事務所の姿」であり、RPAを導入することで心に余裕のある働き方、働く職員は全国へ、顧問先も全国に、そして個性あるサービスを構築し、生産性が高まるということを仰っておりました。実際にこの会計事務所の生産性もこの2、3年RPAを進めていく中で上がっております。これが全てRPAのお陰かどうかは定かではありませんが、一定の効果があるのは間違いないですし、全てではないにしてもマエサワ税理士法人でも導入できる部分があるかどうか検討していく必要はあると感じました。
省力化できた時間を有効活用できるか
ただ様々な説明を伺っている中でRPAに対して感じたことがあります。実際のコンピュータルームの見学も含め、2時間ほどお邪魔しておりましたが、RPA導入による顧問先様への効果、役立ちについては直接的な話はありませんでした。いかに残業時間を減らせるか、働く職員が働きやすい空間であるかがほとんどでした。
私はこれらが悪いこととは思っておりません。こういったことを求めていく会計事務所があること自体も悪いことではないでしょう。そもそも私が人様の事務所の良し悪しを申し上げること自体、ナンセンスです。
ただ、マエサワ税理士法人が盲目的にRPAの導入を図っていったとしたら、どうなるでしょうか。いろいろ省力化される一方で、その省力化された時間が何に使われるのか。顧問先様が稼ぐことに対して考える時間に充てられるのであればよいのですが、単に早く帰るだけであればRPAの意味はどこにあるのかということになります。
さらに言えば、RPAを声高に進めていくほど、社長の皆様から見放されてしまうように思います。つまりRPAは作業の効率化ですから、記帳代行のようなものです。記帳代行を声高に進めている会計事務所にマエサワ税理士法人の顧問先社長がとてもではないですが、経営の相談をされるとは思えません。
RPA導入により効率化を図ることは、今後必須となるでしょう。しかし「我々はRPAの導入を積極的に進めています」と顧問先様に宣伝していくようなことはできない、と思っております。淡々と事務所内にRPAを導入していけばよいのです。
しかし・・・
RPA導入もなかなか一足飛びにというわけにはいかなさそうです。今回の会計事務所内にも反対勢力があり、非協力的な職員もいるということでした。それでもそういった人たちは無視をしてやりたい人だけでやっていっているそうです。RPAを進めるコツはとにかく所長がRPA導入の意思決定をするとともに開発チームの開発者を最低でも2人(もちろん税務業務と兼業)準備し、開発者にはRPA開発のための時間をしっかり与えることだそうです。
面倒の先にしか得られないものもある
コロナ禍もあり急激に間接業務たる経理業務をできるだけ簡素化したいという顧問先様が増えてきております。特に若い経営者には顕著にその傾向がみられます。経理は税務会計に則った処理ができていればよく、市販されている会計システムであれば基本的に何を使っても問題はありません。
また、これから会社を立ち上げる経営者の方にお伝えしたいのは「是非とも最初は社長ご自身で自社の業績把握をして頂きたい」ということです。社長のイメージ通りの売上、そして利益が出ているか、さらに資金繰りがうまく回っているかは社長自身で経理回りを理解していると自分自身で答え合わせが常にできるようになります。
マエサワ税理士法人では、新規に事業を立ち上げた会社の社長には、事情が許す限り、経理回りを社長ご自身でやって頂いております。もちろん簿記の知識がなく、いきなり経理回りをやっていくのは無理ですので、マエサワ税理士法人も一緒にやっていくことになります。しかし2,3か月もすれば経理回りはルーティン業務がほとんどですからすぐにできるようになります。
ここまでくれば誰に経理を任せたとしても社長自身が数字のどこを見れば経営上うまくいっているかどうかが分かるようになってきます。数字が全く苦手だという社長でもこれを知っておくかどうかで経営判断をする際に大きな違いが出てくるはずです。
RPAもAIの利用も効率化のためには必要ですから、バランス感覚が重要になってきそうです。マエサワ税理士法人としてはあくまで「顧問先様の儲けに役立つご提案」ありきでその手段としてRPAやAIがあるのだという認識の下、顧問先様へのお役立ちを考えてまいります。