マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

モノやサービスの価格について考える 

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第170号] モノやサービスの価格について考える 

2024年1月10日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の170】

『儲からない方向に自ら進まないこと 』

顧客がなぜこちらが考える適正な対価を支払ってくれないのか。
品質が悪い?売り方を変えるか?客層を外しているのか? 儲けるための商売は「なぜ?」の追求である。
安くしないと買ってもらえないという思考は諦めであり最後の手段だろう。儲けるために、決して思考を放棄してはならない。

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新年早々、能登では大地震が発生しました。今もって不自由な暮らしをされている方がいらっしゃいます。羽田空港でもJAL機と能登支援のために発進しようとしていた海上保安庁機が衝突し、海上保安庁機の乗組員に犠牲者が出ています。たまたまこのタイミングで起きたといえばそうなのかもしれませんが、あとで振り返った時に「2024年度は大変なスタートだったけども良いこともたくさんあった1年だった」と言えるようにやっていきたいものです。

取引相手に影響力を持てる規模感を目指すこと

少し前のメールマガジンで日本のGDPとアメリカ、中国、ドイツのGDPを比較する形で紹介させて頂きました。国際通貨基金(IMF)の資料によれば2023年米ドルベースGDPで日本はドイツを下回り、世界3位から世界4位へ転落する見通しだそうです。

ちなみに上記4か国のGDPの最新の見通しは、1位アメリカ26兆9496億ドル、2位中国17兆7009億ドル、3位ドイツ4兆4298億ドル、4位日本4兆2308億ドルです。

日本のGDPが3位から4位へ転落した原因は、円安に加え、人口減少や生産性の伸び悩みなど様々な要因が絡まり合った結果だというエコノミストの分析が紹介されています。そして国際的な発言力という意味では全体の経済規模は重要で、中長期的には存在感のない国に落ちていく可能性がある、との見方をされています。これはまさにこのとおりで、ある程度の数字を持っていないと社会へ影響力を与えることはできないと思います。

この順位以上に衝撃的なのがこの4か国の国民一人当たりの生産性です。ますは各国の人口についてですが、GDP1位のアメリカは3億4000万人、GDP2位の中国は14億2570万人、GDP3位のドイツは8330万人、GDP4位の日本は1億2330万人だそうです(国連人口基金(UNFPA)『世界人口白書2023』調べ)。

各国のGDPを各国の人口で割れば、各国の国民一人当たりの生産性がざっと計算できます。実際に計算してみると、1位はアメリカで79,263ドル/人/年、2位はドイツで53,179ドル/人/年、3位は日本で34,313ドル/人/年、4位は中国で12,416ドル/人/年となります。

中国は12,416ドル/人/年と低くなっておりますが、人口が世界最大ですから一人当たりにするとこういう数字になるようです。

アメリカの国民一人当たりの生産性はある程度の人口を有する国々の中で見れば極めて高い数字になっています。大量生産、大量消費を地で行く国ですが、さすがアメリカといったところでしょうか。

問題は日本とドイツです。国として両国はほぼ同じGDPであるにもかかわらず、このGDPを生産している人口は、日本が1億2330万人に対して、ドイツは8330万人です。日本の人口はドイツの人口の1.5倍になっています。つまりこれは日本の国民一人当たりの生産性はドイツの3分の2となることを意味しています。

適正な対価をもらえない仕事はボランティアと変わらない

日本もドイツも世界の人々からはどちらかといえば「勤勉」な国民として評価を受けています。ドイツにはベンツをはじめ世界的に有名な車メーカーが存在します。対する日本にもトヨタをはじめとする世界的に有名な車メーカーが存在します。

少し話がそれてしまいますが、サッカーという球技は国民性が反映されるスポーツだと言われることがあります。日本は個の力はそこまで強くないが、組織力が優れている(最近は個の力もついてきたと言われている?!)。ブラジルは組織力などなくとも圧倒的な個の強さ、個のテクニックで組織など粉砕する強さがある。

世界に有名なサッカーリーグがある中、日本人選手が世界に飛びだして比較的うまくいっているサッカーリーグが、ドイツの「ブンデスリーガ」というサッカーリーグだそうです。ドイツのチームは概してチームプレーを叩きこまれ、規律が徹底されます。もちろん個の強さは重要ですが、「規律を守る」ことが重視されるという、日本人選手がチームに溶け込みやすい土壌があるそうです。

もちろん細かく見ていけば日本とドイツは全く違う所が多いかもしれませんが、少なくとも他のヨーロッパ諸国と比較するとドイツのサッカー思想と日本のそれは似ている部分が少なくないように感じられます。

ポルシェやベンツなどの車を見るとクラフトマンシップを大いに感じます。こういったところも日本でいう職人芸と似た部分を感じられ、遠い異国でありながらなんとなくドイツという国には親近感を覚えずにはいられません。

でも経済的観点でいうと我々日本人はドイツ人の3分の2のGDPでしかないのです。どうして同じ人間なのにこんなに生産性に差が出るのでしょうか。

ドイツのクラフトマンシップは有名ですが、日本より明らかに合理的です。メリハリの利いた仕事をするし、付加価値の高い仕事にはそれに見合った価格をつけます。ドイツ車であれば1000万、2000万ではなく5000万、1億といった車を生産し、販売しています。しかし日本車で1000万、2000万であればともかく5000万、1億の車などほとんどありません。

日本では良いものを安く、という考え方が今までは主流だったと思います。外国人もインバウンドで日本に来て、とにかく日本のサービスはレベルが高いのにチープで最高!と言っています。ようやく牛丼の吉野家が外国人価格を設定するとか、JRの外国人用の周遊きっぷを値上げするなどという話が出てきていますが、当然のことだと思います。

付加価値の高いものを皆で創り上げていかなくてはならないのはどの時代になっても同じですが、問題はその付加価値の高いものを高いのなりの価格で売ることではないでしょうか。どうしてサービスを消費する外国人が喜んで、サービスを提供する日本人だけがおもてなしをしなければならないのでしょう。適正な価値を提供したならば適正な価格を頂く、というごく基本的な考え方を日本人が持たなくてはならないように感じてなりません。