マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

令和6年度税制改正大綱について

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第171号] 令和6年度税制改正大綱について

2024年1月24日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の171】

『税制改正を自分事として捉えるために 』

税金とは大まかに言えば、財産が増えることに対して課されることが一般的だ。
毎年様々な税制改正が行われ悲喜こもごもではあるが、そのうち税制の優遇策とはそもそも財産が増えていなければ受けられない。企業で言えば儲かっていなければ使えるものも使えないということだ。
是非とも黒字を出し続け、税制の優遇策を自社の成長に利用して頂きたい。

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昨年末に「令和6年度税制改正大綱」が公表されました。令和6年に改正される予定の税制内容が記載されております。今回のメールマガジンでは「令和6年度税制改正大綱」の中で中小企業経営に関わりのありそうな部分についてご説明してまいりたいと思います。

法人税の改正

まずは「法人税」について改正事項を見ていくと、①賃上げ促進税制、②交際費等の損金不算入制度の延長・拡充、③その他(外形標準課税における対象法人の見直し、戦略分野国内生産促進税制の創設、イノベーションボックス税制の創設、中小企業事業再編投資損失準備金の拡充等)がございます。

賃上げ促進税制は、物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めることを目的として強化されます。政府も2023年声高に賃上げを企業に求めてきたので、税制面からのバックアップをしてきたようです。2023年との大きな違いは中小企業においては、控除限度額(適用年度の法人税額の20%を上限)の超過額を5年間繰り越すことができるようになったところです。これにより適用年度に赤字であっても翌期以降5年間税額控除できるようになります。

交際費等の損金不算入限度の延長・拡充は、地方活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動の活性化や、「安いニッポン」の指摘に象徴される飲食料費に係るデフレマインドを払拭する観点から、交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準について、会議費の実態を踏まえ、現行の1人当たり5,000円以下から10,000円以下に引き上げられます。これまでもそうでしたが、飲食費には専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のために支出する費用(いわゆる社内接待費)は含まれませんのでご注意ください。

消費税の改正

「消費税」について改正事項を見ていくと、「高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度等の適用制限の見直し」が行われます。高額特定資産を取得し、仕入税額控除の適用を受けた場合には、その後2年間、消費税の原則課税が強制されます(免税・簡易課税適用不可)。企業経営には直接関係ありませんが、棚卸資産として取得した1取引1,000万円以上の金又は白金の地金等(以下「金地金等」)は高額特定資産に該当しますが、金地金等は1取引単位の金額を1,000万円未満とし、高額特定資産に該当しないように調整することが容易であったため、制度の見直しが行われることになりました。高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、その課税期間において取得した金地金等の額の合計額が200万円以上である場合が加えられました。

所得税・住民税の改正

「所得税」について改正事項を見ていくと、①所得税・個人住民税の定額減税、②扶養控除等の見直し、③生命保険料控除額の拡充、④その他(住宅ローン控除、既存住宅等のリフォームに係る特例、税制適格ストックオプションに係る優遇措置の拡大、エンジェル税制、公益信託制度改革等に伴う所要の措置等)がございます。

所得税・個人住民税の定額減税は賃金上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を緩和するため、デフレ脱却のための一時的な措置として行われることになりました。2024年分の所得税額から、特別控除の額が控除されます(その者の所得税額が上限)。特別控除の額は本人3万円、同一生計配偶者及び扶養親族一人につき3万円となっております。個人住民税は納税義務者の2024年度分の所得割の額から、特別控除の額が控除されます(その者の所得割の額が上限)。特別控除の額は本人1万円、同一生計配偶者及び扶養親族一人につき1万円となっております。ただし所得制限があり、2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(個人住民税については、2023年分の合計所得金額)となっております。会社勤めの方はお給料の年収2,000万円以下の方までが対象ということです。

相続税・贈与税の改正

資産税について改正事項を見ていくと、「事業承継税制にある特定承継計画等の提出期限の延長」が挙げられます。非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度、及び、個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、コロナの影響の長期化や物価高騰等の急激な経営環境の変化により事業承継の検討が遅れている状況を踏まえ、特例承継計画及び個人事業承継計画の提出期限を2年延長することになります。これにより特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限が令和8年3月31日に、法人版事業承継税制の特例措置の適用期限は改正前とかわらず令和9年12月31日に、個人版事業承継税制の適用期限とかわらず令和10年12月31日となっております。

以上、令和6年度の税制改正のうち、企業経営に直接かかわると思われる部分について抜粋して書かせて頂きました。ご参考になれば幸甚でございます。また、詳細についてはマエサワ税理士法人担当者にお聞きください。
このメールマガジンでは、普段は「稼ぎましょう」というお話をさせていただいております。ルールの改正を踏まえた上で、儲けを会社にどう残していくか。我々は経営者の方々に選択肢をご提供できる存在でありたいと思っております。今後とも宜しくお願いいたします。