マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

事業を引き継ぐ側、引き継がれる側

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第174号] 事業を引き継ぐ側、引き継がれる側

2024年3月6日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の174】

『最善の承継を目指す苦悩』

何のために事業をやるか。
資本主義や経営という視点からは”儲けるため”という答えが唯一なのだが、人生という視点からは”幸せになるため”というのが一つの答えになるのだろう。

事業を譲る者、継ぐ者、そしてなにより資本主義を生き抜く経営者として、振り返ったとき幸せを築けたと感じる道を歩めるよう、礎となる儲けを今日も積み重ねて頂きたい。

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私も昨年9月で50歳になりました。平成18年12月、33歳の時に前職の監査法人を退職し、マエサワ税理士法人へ入社しました。それから早17年経過しますが、顧問先社長の皆様のお蔭様、前沢会長のお陰様、職員のお陰様により、マエサワ税理士法人は順調に成長し続けております。

最近、ある専門職の顧問先先生が同じ専門職の先生をされているご子息と今後一緒になって働いていくかどうかについて、ご相談を受けました。ご子息は専門職の先生として店長的な立場で既に3年間働かれており、店舗別に見ても売り上げが1番になるほど優秀な方です。ご子息の働かれている会社では5年間で経営ノウハウまで習得することができ、そのあと本格的に店舗運営をしていくことになります。もちろん5年を契機に巣立っていく人が少なくないことは想像に難くありません。

たとえ親子でも全く別の人間であるから難しい

顧問先先生はあと2年待ってご子息が先生と共に働くことを希望しています。先生は根っからの現場主義の方です。金銭的には相当苦労された時期があります。そういう困難を乗り越えてきた方だけに簡単に顧客が増えることなどない、と常日頃から考えていらっしゃいます。

一方でご子息は若くして会社の中でNo.1として活躍されている方です。果たしてお父さんのお話を素直に聞く耳を持っているか、難しいところです。

話が変わりますが、私の場合は監査法人で働き始めて6年が経過したあたりで突然、会長から電話が来ました。普段会長から私に電話をかけてくることは皆無だったので単純にびっくりした記憶があります。私が電話に出ると、「いつ戻ってくるんだ?」「いつまでそんなところにいるんだ?」ということを私に投げかけてきました。

その頃の私は上述のご子息のような優秀さとは無縁でしたが、上司と現場を回りながら、自分自身も現場責任者としてようやく働き始めたところでした。当時の仕事は会長の言葉を借りれば、「チェックマン」です。簡単にいえば、会社の作成した財務諸表が会計基準に合致しているかどうかを確認していく作業が主です。会長からすればそんな仕事何年やっても意味がないのに、いつまでそんな仕事をやってんだ、ということだったのです。

監査法人は、公認会計士が集まっているところです。上場会社は、作成した財務諸表について監査法人からお墨付きをもらう必要があります。お墨付きを得られなければ最悪、上場廃止もあり得ます。私が監査法人に入社した当初は自動車メーカーに配属されたので、日本全国様々なところに出張に行きました。当時は若かったのでそれ自体がすごく楽しかった記憶があります。仕事も新鮮だったので興味を持って取り組んでいました。

しかし仕事を重ねていくにつれて、どちらかといえば後ろ向きの仕事が多いことに気づきます。「これは基準から外れているのでこのように直してください」といったことばかり会社の方に対して求めるのですから、当然に会計監査を受ける会社から良くは思われていないわけです。

今でも忘れませんが、監査法人に入所して初めて伺った会社であるその会社の方に、「税務調査ですか?」と聞かれたので、私は「いいえ、違います。会計監査でお邪魔しております。」と返答しました。当時の私からすれば、税務調査なんかと一緒にしないでくれ、くらいに思っていたのですが、彼の返答は「な~んだ、似たようなもんだな」でした。

その言葉は当時の私には衝撃の一言で、自分の持っている資格は自分が思っているほど大したことがないのだということを思い知らされた瞬間でした。
監査法人というところはやはりパートナー(=共同経営者)になれてナンボの世界です。パートナーになれる勤務年数は概ねがだいたい決まっており、そのタイミングでパートナーになれなかった方の多くは転職していきます。私の同期は9人いましたが、今でも監査法人に残っている人は3人、そのうち1人しかパートナーにはなれませんでした。出世も狭き門です。

歩み寄り、学び合い、ときにはぶつかり合い

そんなこんなで6年働いてきたときの会長の電話でした。電話を切った後にいろいろ考えました。今の仕事はどう考えても自分には合っていない。かといって税理士事務所がどんな仕事をしているのか、本当に全く知りません。

当時、父の事務所に入るということがどういうことか、明確には分かっていなかったと今では思います。文字通り、税理士業界に「飛び込んだ」と言えるかもしれません。

「事業を継ぐ」ということをいくら言葉で聞いてもなかなか体感できるものではありません。やはり事業を継がせる側と事業を継ぐ側が一緒になって事業経営していくのが一番の早道だとは感じます。とはいえ、親子であれば親子なりに様々な衝突がありますし、社長とプロパーの社員であればまた違った衝突があるでしょう。

冒頭の親子の話に戻れば、まだどうなるかは見えていません。私がご子息の立場であれば、今は怖いものなしのはずです。自分が本気になれば顧客などいくらでも取ってこれると思われていることでしょう。もしかしたら本当にそうなるかもしれません。そうであれば先生と一緒に事業をしていくことに疑問を感じるかもしれません。一般論でいえば資金力のあるチェーン店の顧客獲得と町場のお店の顧客獲得とは全く別物です。このあたりをご子息が社長から学ぶ心があれば自身の経験も活かせるハイブリッド型のよい事業経営ができるように感じます。

私自身、税理士業の一番のやりがいは「社長の皆様と直接お話できること」だと感じております。マエサワ税理士法人の顧問先社長の皆様は儲けを大切にされておりますが、そのアプローチはまさに十人十色。時にはヒヤヒヤしたり、時には社長とともに事業目標の達成を喜んだりと、社長とともに歩ませて頂いていると感じる毎日です。もちろん困難なこともないことはないですが、やはり顧問先様あってのマエサワ税理士法人であることは忘れてはならないことだと思っております。

様々な顧問先様で起きていることを自分の目で見て感じて、それを顧問先様のために活かしていくことこそマエサワ税理士法人がすべきことだと思います。どうぞ今後とも末永くマエサワ税理士法人と職員一同を宜しくお願い致します。