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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」
[第175号] 賃上げ促進税制の活用
2024年3月20日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の175】
『儲けを貯めるための行動』
世の中の流れが賃上げに傾いており、資金繰りを考えると頭が痛くなる経営者がほとんどだろう。稼げる人にはそれに見合う賃金を、というのが資本主義の原則とも言えるが、そう割り切れるばかりでもないのが現実だ。
メリットがある税制があったとき、行動を起こした結果にその税制を使うのは当然である。だが逆に、税制があるから行動を起こすという思考になってはいないだろうか。基本的にはお金の出が先に立つわけで、”節税のための無駄遣い”になっていないかには常々注意をしたい。
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今年も所得税の確定申告シーズンを終えました。この時期は我々にとっての繁忙期のひとつです。3月15日までは土日祝日も事務所に来て仕事をしていた職員もおりました。今年も無事に終えることができ、ほっとしているところです。
賃上げ税制の改正による適用の緩和
最近、顧問先様社長とのお話の中で何度か賃上げ税制についてご質問を受けましたので、今回は中小企業向けの賃上げ促進税制についてお話させて頂きます。
中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者等が前年比で給与等を増加させた場合、増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
今回改正となった制度の対象は、中小企業者等として青色申告書を提出する事業者のうち、以下の要件を満たすものです。2024年(令和6年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
①資本金または出資金が1億円以下(ただし、大規模法人から出資を受けいれる場合には除 外規定あり)、資本金又は出資金がない法人は、常時使用する従業員が1,000人以下
②常時使用する従業員が1,000人以下の個人事業主
③協同組合等(農業協同組合・中小企業等協同組合など)
2024年度の改正では、従来の法人区分である「大企業」「中小企業」に加え、「中堅企業」が新設されます。また、雇用者全体の給与等支給額の増加額に対する最大税額控除率がそれぞれ拡充されます。中小企業については、改正前の最大40%から最大45%に改正されました。
今回の改正で変わった部分のひとつに、5年間の繰越控除制度が創設されたことが挙げられます。そもそも賃上げ促進税制の恩恵は黒字法人でなければ受けられません。中小企業の6割が赤字決算の現状では賃上げ促進税制の恩恵を受けることが難しい側面がありました。税額が発生する事業年度まで特典を繰り越すことが可能になったことで、賃上げ促進税制の恩恵を受けることが可能となる法人は増加するでしょう。
女性活躍推進に向けた取り組みも推奨
さらに今回の改正で変わった部分に女性活躍支援・子育てに関する上乗せ措置が創設され、従来の教育訓練費の上乗せに加えて、くるみん認定、えるぼし認定を受けた企業に対する新たな措置が追加されました。
くるみん認定とは、子育て支援に積極的な企業を「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する制度です。次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画に定められた目標を達成し、特定の基準を満たした企業が認定を受けることができます。認定された企業は「くるみんマーク」を商品や広告、求人広告などに掲載でき、子育てサポート企業であることをPRすることができます。
「プラチナくるみん認定」は、さらに高いレベルの両立支援の取り組みを行っている企業に与えられる特例認定です。これを受けた企業は「プラチナくるみんマーク」を用いて、その成果をアピールすることが可能です。
えるぼし認定とは、女性の職業生活における活躍を推進するための取り組みが優れている企業に対して、厚生労働大臣が認定を与える制度です。女性活躍推進法に基づき、一般事業主行動計画の策定及び届出を行った企業の中から、特定の基準を満たした企業に与えられます。
えるぼし認定は、以下の5つの評価項目に基づいて行われます。
・採用:女性の採用状況
・継続就業:女性が長く働き続けられる環境
・労働時間等の働き方:柔軟な労働時間や休暇制度
・管理職比率:女性の管理職への登用状況
・多様なキャリアコース:女性のキャリア形成支援
認定を受けた企業は、「えるぼしマーク」を商品や広告、名刺、求人票などに使用でき、企業の女性活躍推進への取り組みをアピールすることができます。また、公共調達における加点評価や、日本政策金融公庫による低利融資の対象にもなるなど、さまざまな優遇措置が設けられています。
さらに、えるぼし認定企業の中でも特に女性の活躍推進に優れた取り組みを行っている企業は、「プラチナえるぼし認定」を受けることができます。
この改正を見ていると、物価上昇を上回る賃上げを実施するために国も必死です。日本経済はバブル崩壊以後デフレが続き、コロナ禍を経てインフレに転じ始めました。せっかくの税額控除なので有効に使って頂ければと思っております。そのために賃上げは必須ですが、賃上げするにもまずは会社が儲けを出してこその話です。
日本経済は人口減少、高齢化が進んできております。またかつて、稲盛和夫氏はいまの日本人を称して「劣化した日本人」とお話されていましたが、それがさらに進んできているように思えてなりません。
それでも全ての企業がだめになってしまうことはありません。コロナ禍で深く傷ついた企業はマエサワの顧問先様でも少なくありませんでした。こういった企業も目先の損益は回復基調にあり、目標に向かって新たな一歩を踏み出されています。経営者にとってはこの日本という国はなかなか厳しい経営環境であることは間違いありませんが、だからといって主戦場を海外に移すことも難しいのが現実です。
ただ日本という国がどういった方向に行くにせよマエサワ税理士法人としては顧問先様と一緒に是が非でも黒字を目指してやってまいります。賃上げ税制についてはマエサワ税理士法人の担当者になんなりとお聞きください。