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令和6年度所得税の定額減税について 

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[第180号] 令和6年度所得税の定額減税について 

2024年5月29日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の180】

『意識は儲けと生産性に置くこと』

本制度はスピードを重視したあまり、実務側には不安や混乱の声が上がっている点は否めない。
だが、どんな物事でも、万全の状態で始められるということは少ないものだ。
この程度のイレギュラーであれば当たり前にこなせるくらいを自社の経理・税務担当には期待したいところだ。

なお、本制度は、経営者として儲けを追求するという観点からは少し離れた内容である。
世の中の情勢として把握はしつつも、気に留めすぎず日々の儲けの追求に目を据えて頂きたい。

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令和6年度の所得税・個人住民税の特別税額控除(定額減税)が6月より実施されます。「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11 月2日閣議決定)において、「賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するため、デフレ脱却のための一時的な措置」として決定致しました。

さて、今回の定額減税は法人の給与事務を通して実施されます。給与計算担当者は注意を要しますので、そのあたりのことも本号ではお伝えできればと思います。

定額減税制度の概要

〇対象者は、

① 居住者(国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人)
② 合計所得金額が1805万円以下(給与収入のみであれば年収2000万以下)

〇減税額は、

所得税については「本人」3万円、同一生計配偶者(納税義務者と生計を一、かつ、合計所得金額48万円以下)3万円、扶養親族3万円/人
個人住民税については「本人」1万円、控除対象配偶者 (同一生計配偶者のうち納税者の前年の合計所得金額が1000万円以下)1万円、扶養親族1万円/人、控除対象配偶者を除く同一生計配偶者1万円(令和7年度分の所得割の額から控除)

(給与所得者の場合)
〇減税方法は、

給与所得者の場合は、給与支払者が給与等を支払う際に、源泉徴収税額から定額減税額を控除することで減税されます。令和6年6月1日以降の最初の給与等の源泉徴収額から順次控除し、控除しきれない場合は年末調整で控除します。それでも控除しきれない場合は給付措置が行われる見込みです。

※給与支払者(会社、個人事業主)は2つの事務を行うことになります
①令和6年6月1日以降に支払い給与等に対する源泉徴収税額から定額減税額を控除する事務
②年末調整の際に、精算を行う事務

〇個人住民税(特別徴収)
令和6年6月分の住民税は特別徴収されません。令和6年度分の住民税の所得割額から減税額を差し引いた額を11等分し、令和6年7月分から令和7年5月分が毎月特別徴収されます。
※減税対象外の人(令和5年分合計所得金額が1805万円超の場合や均等割・森林環境税のみ課税される場合)は従来通り令和6年6月分から特別徴収されます。

(個人事業主の場合)
〇所得税
令和6年分の所得税の第1期分予定納税額(7月)から本人分の定額減税額を控除します。控除しきれない分は第2期分予定納税額から控除し、それでも控除しきれない場合は確定申告で精算します。扶養親族等の分は確定申告で控除しますが、予定納税額の減額申請を行うことで、第1期分予定納税額から控除します。

〇個人住民税(普通徴収)
第1期分の納付額から控除されます。控除しきれない場合は第2期分以降の納付額から順次控除されます。住民税決定通知書で本人と扶養親族分等を減税した納付額が通知されます。

(その他)
通常は令和6年6月の給与・賞与から、扶養親族等の分を含めて減税を行う必要がありますが、
・令和6年6月以降に結婚・出産・子供の就職など、「扶養控除等申告書」や「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の記載事項に異動が生じた場合
・令和6年6月2日以降に社員を中途採用した場合
・令和6年分の合計所得金額が1805万円を超える場合 
には「年末調整」での精算が必要になります。

給与計算事務として
令和6年6月1日以降に支払う給与等に対する源泉徴収税額から定額減税額を控除する「月次減税事務」と年末調整の際に精算を行う「年次減税事務」を行うことになります。

立場によって受け取り方も様々

以上が「定額減税」の概要になります。顧問先社長の皆様が給与計算事務を行う場合もあるでしょうし、専門に人事総務を独立して置かれている会社、経理も兼ねて給与計算事務をされている会社など会社によって誰が給与計算事務をされているかは違っております。

個人的にはいろいろ考えさせられる減税措置ではありますし、ここで概要を書かせて頂きましたが、書いている最中でも実はこんな場合はどうなるのだろうと思わず考えてしまう部分もございました。今年の年末調整から確定申告にかけては通常とは違う部分にも気を遣わなくてはならないと思うと・・・

それはさておき、会社にとっては手間がかかる事務作業が出てまいります。6月に支給する給与から定額減税のための事務作業が始まります。社員の給与から定額減税として差し引く所得税を各人3万円に達するまで所得税減税を実施していかなくてはならないので、3万円を控除するまで各人所得税をいくら控除しているか把握しておく必要があります。

それから、今回の「所得税の減税額を給与明細への明記」が必要になるようです。手取り額が増えたことを実感してもらうことが狙いだそうです。

定額減税は詳細が整わずのスタートになりそうですので、マエサワ税理士法人各担当にご不明点等お聞きください。宜しくお願い致します。