マエサワ税理士法人公式メールマガジン前沢寿博の「企業経営の王道」

ホルムズ海峡閉鎖の意味するもの

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マエサワ税理士法人
前沢寿博の「企業経営の王道」

[第229号] ホルムズ海峡閉鎖の意味するもの

2026年4月8日 配信
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【マエサワ税理士法人 経営の哲学 其の229】


『備えこそが最大の経営判断である』

外部リスクにどう動くかは、経営者の覚悟が問われる場面である。

持つべきは被害者意識ではなく競争意識だ。

あの時、一歩早く、一歩深く備えた企業だけが荒波を越えられた。

「もっとこう動けたはずだ」と悔やんだ経営者は、今回どのような一手を打つのだろうか。

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■原油ストップが突きつける中小企業の連鎖危機■

2月28日にアメリカがイランを攻撃し始めてから原油が日本にほとんど入ってこなくなりました。当初トランプ大統領が短期で終わらせると言っていた戦闘も、既に1か月が経過しましたが終わる気配はないようです。

とある規模の大きな会社の話ですが、こちらの社長はアメリカの攻撃に対するイランのホルムズ海峡封鎖が引き起こす原油高、あるいは今後も原油が日本に入ってこない場合の備えを考え、いち早くそれを実行されていました。

月次経営会議の場では「もしアメリカの攻撃が止まず、ホルムズ海峡封鎖が半年続いたなら、当社の売上は現在の3分の1くらいまで落ちるだろう」と予想し、コロナ禍後好調な業績を続けていた自社の業績悪化を懸念されておりました。

社長曰く、原油が入ってこなければ、まず考えるのはエネルギー供給がストップするということです。運輸・物流は大混乱に陥ります。毎日の通勤にも不便が出るかもしれません。あるいは荷物の遅配なども考えられます。

ただ、影響はこれだけにとどまりません。つまり、原油由来の製品の供給も止まるのです。
食肉産業を例に挙げれば、生肉をスーパーで販売する際のトレーは原油由来のものです。トレーがなくなれば生肉を今まで通りには売れません。食肉加工工場では機械を動かすのに重油が必須ですが、仮に重油の供給が逼迫する事態になれば、まずは超大手企業に優先的に割り当てられることでしょう。そうなれば中小の食肉加工工場は稼働もままなりません。

このようなことが各産業で起こるため、原油が日本に入ってこなければ日本経済はストップするといっても過言ではないでしょう。

イランとの紛争を引き起こしたアメリカも備蓄だけでは需要を賄いきれません。しかし現在、アメリカはシェールオイルなどの開発によって世界最大級の産油国となっており、また世界有数の石油輸出国にもなっております。そういった側面もあり、アメリカはホルムズ海峡が封鎖されたところで原油についてはそこまで大きな打撃を受けません。

■取り越し苦労で終わる覚悟を持てるか■

問題は、原油の供給停止が中長期化した場合にどう備えるのか、そのために「今」何をしておくのか、という点です。

ちなみに日本の原油備蓄量(2025年12月末現在)は国家備蓄が146日分、民間備蓄が101日分、産油国共同備蓄7日分の合計254日分だそうです(資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」2026年2月公表)。

ただし、これらが全て危機対応で取り崩せるかといえば、特に民間の備蓄は普段から在庫としてカウントされている部分もあるので、101日分すべてを危機対応としても取り崩すのは難しいようです。

さらに仮に危機対応で取り崩したとしても、それがすぐに必要とされるところに供給されるかといえばかなりのタイムラグがあるそうです。

何も起こらなければ取り越し苦労で済みますが、万一に備えておくことは必要かと思います。これはおそらくそれぞれの会社の社長によって答えは異なりますし、正解といえるものがあるかは今の時点ではわかりません。

先述の社長は万一の事態が起きて、売上が現在の3分の1になったとしても資金繰りが詰まらないように融資を取り付けたそうです。

どの会社でも融資をお願いしましょう、という話がしたいわけではありません。ただこちらの会社の場合は、いざという時に融資を申し込むよりは、表面上まだ何も起きていない今の方が融資を受けるのであれば”良い”、との経営判断をされたまでです。

繰り返しになりますが、原油がしばらく入ってこなくなった場合に、自社にどんな影響が出てくるか、そうなった時に何をしなくてはならないか、を考える必要があるということです。

中小企業が大企業を上回る強みのひとつに「スピード」があります。それは考えるスピード、実行するスピードです。もしホルムズ海峡の封鎖が近い将来に解かれればそれはそれで取り越し苦労だった、で済む話です。

おそらく今回の原油問題に限らず、今後も我々一人一人では如何ともし難い、しかしながら自社の経営には大きな影響を与える事象が降りかかってきます。コロナ禍で嫌というほど経験したことです。

対策を打ったとしてもそれで十分ということはないと思いますが、いずれは終わるだろうという楽観主義的思想ではこちらが先に終わってしまうこともあるのです。

コロナ禍が過ぎ去ってまだ何年も経っていませんが、もしかしたら危機は迫っているのかもしれません。我々も月次訪問を基本としていますが、それができない日々がやってくる可能性もあります。そうであっても顧問先様に寄り添える形を考えていかなければいけません。

将来の予測とその対応も、経営者に求められる重要な業務といえるでしょう。1日も早くホルムズ海峡の閉鎖が解かれることを心から祈らずにはいられません。