日々の粗利管理の重要性

事業内容

A社が創業したのは昭和34年。東京の下町に会社を構え、各種機械部品の卸売・製作を行う企業です。従業員数は10人にも満たない会社で、先代が創業して以来、山あり谷ありではありましたが、なんとか会社経営を続けてきました。

関与時の状況

2008年のリーマンショックを機に、受注量が激減。さらに貸し倒れにもあい、資金繰りに苦しんでいました。それでも銀行からの借入金により、なんとか経営を続けていました。

しかし、大きく膨らんでしまった借入金の返済が厳しくなるなど、資金繰りの悪化に歯止めがかからない状態に陥ってしまいました。従業員がこれらの状況を理解していないのも問題です。

弊社の顧問先の紹介により、そんな崖っぷち状態のA社と顧問契約を結ぶことになりました。

分析

社長をはじめ、危機意識が低いことも経営の悪化を招いた要因です。そのため、無駄な経費、無駄な出費も多く、“出血”が止まらない状況になっていました。

現場サイドでは、先代からの悪しき習慣が続いていました。客先に寄って16時ごろに直帰してしまう文化、各営業が同じ取引先に重複して訪問、新規開拓営業や御用伺いの営業をしないなど、問題が山ほどありました。また、明確な数値目標がないことも、社員の士気を下げる要因となっていました。

対策

A社が復活するため、私どもはあらゆる提案をしました。まず、無駄な経費、出費がないかを徹底的に精査しました。“止血”をすることは、会社を立て直すための最優先事項です。

さらに、A社全員と弊社スタッフで、毎月の月次決算後、経営会議を行うようにしました。会社の強みと弱み、問題点の共有をしてもらうだけでなく、未来への前向きなプランを社員全員で決め、実際に行動してもらうことにしたのです。

現状では会社の粗利益から給料を支給し、諸経費を払うことしかできないこと。その粗利益を出すには、一人あたり月にいくら稼がなければならないかなど、具体的な問題や目標を共有してもらいました。

日々の粗利益をつけさせて

会社の売上などの数字を社員全員に開示してもらいました。また、営業担当者には日々の売上高、仕入高に加え、日々の粗利益を営業日誌に記載してもらうようにしました。社員一人ひとりが儲けに対する危機意識を持ち、会社の置かれている状況を把握する必要があったのです。

営業担当者は、計算した内容を社長に報告します。その報告に基づき、社長には各担当者の売上、仕入、粗利益を管理してもらうことにしました。

現在では

社長自身が月々の総売上の目安がつくようになり、かつ粗利益も同時に把握することが容易になりました。資金繰りを考える上でも、月次決算の結果を待つことがないため、経営判断のスピードが大幅に向上しています。

役員報酬を減額するなど、社長自身が本音で立て直すと真剣さを示すことで、社員にも危機感が芽生えました。ほかにもたくさんの改善を行った結果、前期マイナス数百万円の符号がプラスに転換しました。弊社の関与から2年目を迎えましたが、黒字を維持しています。

また、金融支援についても中小企業経営力強化支援法に基づき、認定支援機関である弊社が金融機関との交渉をサポートしています。クライアントが納得のいく結果を得たことで、会社の立て直しは円滑に進みました。

担当税理士からのコメント

一社員にとっては小さなことと思うかもしれませんが、その日々の小さな積み重ねが、月次の決算に数字として現れ、業績を回復させます。ほんの少しの意識改革やきっかけで黒字化する企業様も多くいらっしゃいます。

事業を継続していく中で様々な問題がのしかかってきますが、あきらめずに、絶えず問題に取り組む姿勢で今後も担当させていただきます。